その一つ覗けば暗し蝉の穴

庭の木の下の乾いた土にぽつぽつと穴がある。それが蝉が地中から出た時の穴だと気づいたのは俳句を始めてから。小さな穴で覗くと暗い。すぐに曲がっているようだがまだ掘り返して確かめたことは無い。覗いてみたのは眺めていても句にならなかった時、、、。(2015年夏詠)

水掛けし中に落蝉生き返る

さあ八月です。心してがんばりましょう。時節がら庭にも落蝉の姿があります。一見生きているのか死んでいるのか分からない。蝉の身体は死んだ途端に乾いているような気がします。だからと言う訳ではありませんが、たまたま撒いた水が掛かり、ジジジジと鳴いて動き出した油蝉、、、。(2015年夏詠)

歩き出すまでつかの間の朝涼し

外に出ると一瞬だが涼しく感じる。さあ行こうと犬にリードを付け、歩き出すともうジワーッと暑さが襲ってくる。夏の散歩は大変です。今日は七月三十一日、当たり前ですが明日から八月、秋に向けてもう一頑張りです、、、。(2015年夏詠)

崩せども修復早し蟻の列

突然に庭を横切って延々と続く蟻の列を見つける。どこに大きな巣があったのだろうと思って探してみるが、結局元の巣の場所も行先の場所も分からないで、その中央辺りを箒で分断してみたりする。その時は慌てて右往左往しているように見えるが、ちょっと時間が経つとまた同じように粛々と列は続いている、、、。(2015年夏詠)

青田風そこに命のあるやうな

土手の上から青田を見ていると風が波となって寄せてくる。稲の揺れはちょうどその先端あたりで大きく、後はしだいに小さくなって行く。時々止まるような動きをし、渦巻いたりする。まるで風も生き物のように感じられる、、、。(2015年夏詠)

迷ひつつ風の通りぬ夏館

倉敷大橋家住宅、こんなに広かったら風も迷うだろうなあと思った時の句ですが、実に上手く風は抜けて行くものです。昔の家ならではです。私の実家も田舎の農家の造りですから見事に風が抜けました。ただし迷うことなく一直線に抜けられる家でした、、、。(2015年夏詠)

泳ぐほどプール孤独でありにけり

夏休みに入った数日間はプールも子供が多くて大変でしたが、ここに来てちょっと落ち着いた感じです。たぶん水泳大会も一通り終わって、本気で練習する子がいなくなったせいでしょう。遊びの子供たちは屋外の流れるプールや滑り台へ行きますから、それほど邪魔にならないのです。プールは孤独に泳げるぐらいのほうが良いです、、、。(2015年夏詠)

遠花火音に庭下駄突つかける

先週の週末から遠花火の音が聞こえるようになりました。最近は小さな花火大会が各地で開かれて、全く事前の情報が無いので驚くことがあります。先週も以外と近い音に慌てて見に出たのですが、結局音だけでどこの花火大会ともわからず仕舞いでした。もう花火大会のシーズンかと、その音に昔の記憶を重ねるのも良いものですが、、、。(2015年夏詠)