冬ぬくし身ぶりで電話する女

寒い日が続いていますのでこんな句を、、、。携帯電話の発達に伴って増えた光景です。あまり人のことは言えないかも知れません。人ごみの中でもついつい大きな声になってしまうことがあります、、、。(2015年冬詠)

冬ぬくし両手にあまる園児つれ

寒い句が続いたので今日は暖かい句を、、、。平日に吟行に行くと保母さんに連れられた園児たちをよく見かけます。保母さんって大変だなあと思いながらいつも眺めるのですが、最近はリヤカーを改良したような車に大勢の園児を乗せて移動するのも見かけます。あれは良いですね。子供は乗り物が好きですし、何より保母さんの目が届きやすいですからね、、、。(2014年冬詠)

冬ぬくし寄り添ふやうに犬のゐて

なんだか暖かい冬ですね。おかげで犬との散歩では助かっています。何しろリードを持つのにまだ手袋が要らないのですからね。エルニーニョの影響で、今年は暖冬ドカ雪だそうです。とは言うものの、そろそろ冬用のタイヤにしておかないと、油断しているとドカンとやられるのです。掲句は去年、寒い中の暖かい日でした。愛犬もみじは付かず離れず、主人と同じで顎のあたりに白いものが増えたものの付かず離れずの毎日です。昔と比べればおとなしくなりました。今では叱ることもほとんど無くなりました、、、。(2014年冬詠)

母さんと呼ばるる女将冬ぬくし

「室戸」その6 寂れた国道55号線沿いにはほとんど店がなく、やっと見つけた小さな海の見える食堂、何かは食べられるだろうと入ると、片隅に数人の中年の男が話している。どうやら酒が入っているらしい。「「いらっしゃいませ、何にしましょう」と立ってきた女将は、口調は若そうだが見た目は十分に年を召している。目の前の黒板に日替わり定食の文字が見えたので、迷わずそれを頼み、ストーブがあったので、その傍の席に座った。ストーブの上には小ぶりのサツマイモが美味しそうに焼けていた。厨房で油の音をさせ定食用に鯵のフライを揚げている女将を、男たちは「母さん」「母さん」と呼び、女将は器用に男たちの話に相槌を打つのだった、、、。(2011年冬詠)

空すべる模型飛行機冬ぬくし

散歩コースにある河川敷のグランドは電線がないので模型飛行機を飛ばすにはちょうど良いようだ。昨年の冬に見た掲句の模型飛行機はエンジン付のグライダーで、静かに晴れた冬空を滑っていた。天気が良かったので犬と一緒にしばらく見ていたら降りてきた。主翼が2メートルほどもある大きな飛行機で、操縦席にはちゃんと小さなパイロットの人形が座っていた。操縦していた30代後半と思える男性に聞くと、燃料はバッテリーで1回の充電で40分ぐらいは飛べるらしい。道理で静かなはずだ。「今日は暖かくていいね」と言うと「いやあ、じっとして操縦していると結構寒くて」と言いながらも、顔は十分満足そうだった、、、。(2013年冬詠)

通訳の手話軽やかに冬ぬくし

四国赴任中の2ヶ月間は、週末は津山へ帰り週明けに四国へ渡る生活だった。行程の中に入れた何ヶ所かのSAの一つ、瀬戸大橋を渡り高松自動車道をしばらく走ったところにある津田の松原SAでの景。観光ではなさそうな五六人のグループが、海に向った窓辺で談笑していた。中の一人が見える場所の説明をしている。他の人が聴きながら相槌を打ったり笑ったり、談笑をしている。その中の一人が自分も話に加わりながら一方で手話通訳をしていた。その手さばきの軽やかなこと、滞ることがなかった。どこかの職場仲間かも知れないなあと思った、、、。(2011年冬詠)

冬ぬくし猫に開けおく通ひ道

岡山駅西口から駐車場へむけて路地裏を歩いていて見かけた景、通りに向いた板壁の下に小さな扉が開いていた。人間は通れない位置だから猫の道と勝手に推察した、、、。猫用に作る一般的な出入り口は、壁や扉の下部に押すとどちらにも開く小さなドアを付けるもの。一応風も防げるし便利だが、欠点は他所の猫まで入ってしまう事、、、。今の時代だから猫の首輪にセンサーを付け、愛猫だけを感知して開く自動猫の道を作ったら売れないだろうか、、、?(2012年冬詠)

古具屋に「こばた」の看板冬ぬくし

通い始めた小学校のそばのお店、軒先にこの看板がありました。吊るした看板の両面に大きくひらがなで書かれた「こばた」の文字、入学したての一年生にはかっこうの話題でした。だって横書きの時は左から読むと習ったばかり、「こばた」と読めるが意味がわからない、、、。新しい「たばこ」の看板に変わったのはずいぶん後のことでした、、、。掲句は岡山奉還町の路地を入ったところにある古具屋で見かけた看板です、、、。(2012年冬詠)