流れ来て流れ行く花見て飽きず

流れを見ながら何んとはなしに考え事をするというのは子供の時からの癖です。朝から実家の前にある小川を眺めていて、あまりにも帰りが遅いので父が迎えに来たりしていました。今でも流れを見るのは好きですが、特にこの時季は格別ですね、、、。(2016年春詠)

また一人花見る人となりに行く

堤防の一画に桜並木があります。そこに続く畦道があります。堤防の上を通り、あるいは畦道を通り、桜のシーズンには人が集まって来ます。みんな顔が上を見ていますので、桜が目的とすぐわかります。また一人、、、。(2015年春詠)

千光寺石の狸の花まみれ

津山市城東の町並保存地区の二つほど裏通りの山沿いに千光寺はある。樹齢百五十年という大きな枝垂桜があり、近年は度々テレビで放映されたりして、満開の頃には人足が耐えない。そんな桜も満開を過ぎると途端に人足は遠のき、しだいに木の下の石の狸が寂しそうに見えてくるが、そんな頃のほうが好きなのは私ぐらいのものだろうか、、、。(2013年春詠)

給水車休ませてゐる花の下

吉井川の支流の小さな川沿いに桜並木がある。どこにでもある桜並木で今時めずらしくも無く、まして平日ともなれば、満開の花の下にも人影は無い。ちょうど昼時だったか、通りがかるとその花の下に給水車が一台止まっていた。オレンジ色の給水車が不思議と満開の桜に合い、花の下で昼寝でもしているように見えた。しばらくして用事を済ませて再び通りかかると、給水車は二台に増えていた、、、。(2013年春詠)

花万朶空に日陰のなかりけり

満開の桜があり、雲一つ無い空がある。他に何が必要だろうか、、、。津山吟行での句会場にと思っていた作州城東屋敷の座敷が借りられることになり、市役所まで手続きに行った。担当の部署は市庁舎の五階にあった。来意を告げると、一番奥の席で窓を背に電話されていた方が出て来られた。簡単な書類を書き「すぐに許可証を発行しますから」と言われるので、待つことにした。手持ち無沙汰で、ぐるりと見渡すと、南側の広い窓の正面に鶴山公園が見えた。この位置から見る鶴山は初めてだった。まさに満開を迎えようとする山は、全体が桜色に染まって見えた。きれいだった、、、。ほどなく許可証は出来た。「ここはいいですね、鶴山が正面に見えて。初めてです」と言うと、「ええ、いいでしょう、五階だけなんですよ。こちらからは衆楽も見えるんです」と席のあった後側の窓を示された。市庁舎のすぐ下が衆楽園だった、、、。昨日下見に行った城東屋敷で、管理人の女性二人が「担当はMさんです」「あの人、ちょっと偉くなったんだったね」と話していたことを思い出して、すこしだけ可笑しかった、、、。(2010年春詠)

花万朶空に日陰のなかりけり

数限りなく詠まれてきた桜をどう詠んでも類句類想の域を出ないだろう、とは思いつつ毎年詠んでしまいます。写真は毎日眺めて通る土手の桜です。引っ越して来たのも四月でした。私の背丈ほどの木が慎ましく花をつけていました。その木がこんなに立派になりました。私が見てきたぶんだけ桜も私を見てきたのだと、ふとそんな事を考えました。昨日が満開でした。(2010年春詠)

上ばかり見てつまづきぬ花の下

倉敷酒津吟行句。酒津へは小学校の遠足で行ったきりで、土手を越えた記憶と、ぬかるんだ道があった記憶だけで、風景などは全く覚えていなかった。たぶん当時とはそうとう変っているのだろうと思いながら歩いていたら大きな石碑があった。う~ん、かすかに見たような記憶が、、、。散りかけた桜に見とれていたら走り根に躓いてしまった。(2009年春詠)