路地入ればそこに枯蔓からむ門

小さな通りから横を見るとさらに小さな路地がある。奥まったところに背の高い洋風の門扉が見える。錆びた門扉には蔦が絡まり、まだ数枚の葉が落ちずに残っている。ここは裏口で、その向こうには他に入口がある大きなお屋敷があるのかも知れない、とそんな事を考えるような路地の風景、、、。(2015年冬詠)

注連作る男四人が膝揃へ

昨年の11月26日、阿智神社での句。阿智神社ではこの時期から注連縄作りが始まります。今年は今日(24日)が倉敷での句会、たぶんもう始まっているでしょう、見学を楽しみにしています。境内に張られたテントの中で氏子の方々が談笑しながらの注連縄作り、テントは風よけに四方を透明のビニールで囲ってあります。寒い日は暖房も効いています。見学に入ると眼鏡が曇るぐらい、、、。(2015年冬詠)

茶の花や空家静かに崩れゆき

かつては手入れの行き届いた生垣だったのだろう。その生垣の中に数本の茶の木が混じっている。普段は奔放に伸びた周囲の植物の中で全く目立たない存在だが、この季節になると白いおとなしい花をつけ、その花によって茶の木があった事を思い出すのだった。空家のある場所は滅多に通らないが、通るたびに少しずつ崩れていき、今年はとうとう倒壊してしまった、、、。(2015年冬詠)

眠り行く落葉大地の色となり

夕方見ると綺麗だった落葉が翌朝掃こうとする頃にはもう色が変化している。落ちた瞬間から湿度や温度の関係で変化が進んで行くのだろうか。あるいは土中のバクテリアの影響なのかも知れない、二三日忘れた所を掃くと下のほうは大地の色に近くなっている、、、。(2015年冬詠)

白菊や黄菊や朝の路地ぬける

隣家の軒下に菊が数鉢並んでいます。今年は作られていないのかと思っていたのですが、ここに来て中程度の大きさのそろった白と黄の数鉢が並んでいます。作者のきちんとした性格が表われているような菊です。掲句は昔、徒歩通勤途中の路地に面したお宅の横を抜ける時の句です。こちらは寄せ植えの小さな白と黄、赤ら顔のおじいさんの花畑、、、。(2002年秋詠)