一人居の窓ふさぎたる吊し柿

予想通りと言うべきか我が家の柿は今年は不作でした。数えるほどしか無いので今年は吊し柿は無しです。掲句は古い句ですが近所の二階の窓です。私の実家でもずいぶんたくさんの吊し柿を作っていました。今思えばどうやって消化していたんだろうと思うほどです。もちろん手伝いもしましたので、今でも皮むきは得意です、、、。(2002年秋詠)

黙々と通学班長朝しぐれ

時雨の季節になりました。突然降って来て列の子供たちは慌てて傘を開きます。でも先頭を行く通学班長は傘を忘れたのです。けれど動じません。ひたすら前を向いて同じペースで黙々と学校を目指します。徒歩通勤をしていた頃に見かけた景です、、、。(2001年冬詠)

少年の心にひとつ竜の玉

立冬、いよいよと言う感じで冬に入りました。庭のあちこちに鳥の運んだ種から竜の髯が生えてきます。邪魔なところは抜くようにしていますが、隅っこの木の陰のような所は抜き忘れて大きく育ちます。数年たつと実がなり、この時季になると色づきます。その瑠璃色の艶やかな実に、子供の頃に遊んだことを思い出します。そうするとまた抜けなくなってしまうのです、、、。(2015年冬詠)

露天湯に指のふやけて秋の風

確か松江あたりの温泉。町内会の旅行で、出雲大社まで足をのばして温泉旅館で食事と風呂という慰安旅行の定番のコース。露天湯と言っても旅館の庭にある周囲を竹垣ふうの塀で囲った風呂、それでも気持ちよかったなあ。そのメンバーも何人かはすでに鬼籍に、町内の旅行も財政難で久しく無い、、、。(2011年秋詠)

草むらの箱に捨猫うそ寒し

我が家の側の細い道も今では車が多くなって困っていますが、以前は本当に寂しい田圃の中の道で、時々捨て猫や捨て犬があって困っていました。見ると可哀そうになるので、草むらの中で声がしても知らん顔で通り過ぎていました。最近は賑やかになったせいか捨て猫や捨て犬はなくなりました。そのかわり日々ごみが、、、。(2001年秋詠)