戦に破れし猫に冬日向

強いのだか弱いのだか分からない我が家の猫。他所の猫が現れるようになると数日間戦に出て行く。手傷を負った時もそうでない時も、戻って来ると今度は数日間死んだように眠って過ごす。勝ったとも負けたとも言わないが、他所の猫は来なくなるので、たぶん勝ったのだろうとひいき目に見ている、、、。(2021年冬詠)

校庭の声止むチャイム冬日向

阿知神社の裏に回ると麓の小学校の校庭が見える。休み時間になると賑やかな声が響き、走り回る児童等の姿が見える。その声がちょうどピークになった頃にチャイムが鳴り、途端に声も児童等の姿も消えていく。後にはやわらかい日差があふれる冬の校庭だけがが残る、、、。(2015年冬詠)

機関区を覗けば午後の冬日向

機関区には広い敷地に何本もの線路が走っている部分と、整備に使う背の高い古びた大きな建物がある。建物の中にも線路があり、その一つが塀際まで飛び出した形で、そこに大きな扉がある。夏の間はそこを開けて作業をされていることが多いが、冬は閉ざされていることのほうが多い。たまたま開いていたので覗くと、明かり取りの窓から入った午後の日差がちょうどスポットライトのように線路の部分に当たっていた、、、。(2012年冬詠)

冬日向犬と良く似た老人と

自分のことではありません。句会への途中、岡山西川緑道公園での句。緑道公園では時々こういうほのぼのとした方に出会う。それは時には犬と老人であったり、またある時は老夫婦であったりするのです、、、。(2013年冬詠)

当然のやうに猫ゐる冬日向

朝の散歩の途中、田圃二枚ほど離れた畦道でじっとしている猫がいる。「おーい」と呼ぶとこちらを見て怪訝そうな顔をしている。どこかで見た猫のようだったので「元気にしとるんかあ」と声をかけておいた。もちろん返事はなかったが、、、。その日の夕方、外で妻が何やら大きな声をしているので出てみると、一年ほど前に我家に居候していた猫が帰って来たと喜んでいる。えっ?まさか、と思ったが「ニャー」と声がしたところに居たのは、確かに朝の散歩の途中にいた猫だった。あれから一週間、強そうになって戻ってきたアメリカンショートヘアーの雑種の雄猫は、我家の物置の横でゆうゆうと身体の手入をしている、、、。(2013年冬詠)