戴きし全き空に山笑ふ

暖かくなりましたね。青空の下で山が笑っています。松や杉の常緑樹の山はそうでもありませんが、雑木山は山全体がもやもやとして、ことに笑っている感がありますね。山が笑うとはうまい事を言ったものです、、、。(2022年春詠)

林立の発電風車山笑ふ

もう二年近く、毎朝眼の運動をしています。そのせいか最近遠くの山が良く見えるのです。山上の鉄塔らしき物、建物らしき物を見つけて、何だろうと想像して楽しんでいます。掲句の山はもう少し近く、発電風車は良いのですが、いつのまにか周囲がはげ山に、、、。(2018年春詠)

鳥よりも巣箱の多し山笑ふ

早島公園の頂の広場には周囲に植えられた木々に巣箱がたくさんかかっています。ですが、夜になると戻ってくるのか、昼間はほとんど鳥の姿を見ることがありません。低い位置にも巣箱があるので、中を覗いて見たい誘惑もありますが、良い大人ですからそんなことはしません、、、。(2016年春詠)

山笑ふ産毛のごとく雑木伸び

伐採された山に新しい木々が生え始めている。山を人間の頭に例えるなら、ちょうど禿げた頭に生えた産毛程度ではなかろうか、とふと考えた。もっとも人間の禿げ頭が再生することはめったに無いが、こちらは強い。ふさふさと、確実に勢力を広げて行く、、、。(2016年春詠)

秋に見し絵描またゐる山笑ふ

国道313号線の多和山トンネルを抜けて高梁側に下りると、吉備高原の端になるのだろう、急に切り立った山が迫って来る。やっと帰ってきたと故郷を意識するのがこの辺りで、春夏秋冬絵になる風景を見せてくれる。前年の秋に道端でその山に向かって絵を描いている初老の方を見かけ、一旦車を止めたが、邪魔をしてはと思い直してその場を後にしたことがあった。山に向かって絵を描く男のいるその風景がまた一枚の絵のようで心に残った。で、そんな事は忘れて次の春に通りかかったのだが、また同じ所で同じ方が、、、。(2014年春詠)