山の上にある阿智神社の絵馬堂は風がよく通る。絵馬堂にたどり着くと、そこまでの石段のきつさゆえに余計に風が気持ち良い。たくさんの絵馬がカラカラと乾いた音を立てている、、、。(2017年秋詠)
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住み旧りし空広き地の鰯雲
私の育ったところは両側に山が迫ったⅤ字型の谷底のような所でした。だから空も狭く、鰯雲は山から山にかかり空一面を覆ってしまいます。それに比べると今住んでいる所は空が広い。高い建物もなく、空がずいぶん遠くまで見えます。だから鰯雲も空一面を覆うなんてことは無く、のんびりと流れて行くように見えます。鰯雲を見る度に空の広さを想い、この地で過ごした年月を想い、そして想いはいつの間にか故郷へと移って行くのです。故郷で過ごした年月は、今ではこの地で過ごした年月の何分の一かに過ぎないのですが、、、。(2017年秋詠)
声にして追へど逃げざり秋の蚊は
また面倒なものです。眼鏡があるからいきなりは打てないと分かっているのかどうか、眉毛の一番端っこの辺に確かに蚊の気配、両方の手がふさがっているのに、、、。(2017年秋詠)
鬼灯の葉の衰へが実の色に
何年も前に古くなった鬼灯の実を埋めて置いたら、ほとんど雨がかからない場所にも関わらず、それから毎年芽を出しいくつかの実をつける。場所のせいもあるがこの時期になると葉はほとんどよれよれの状態、それでも実だけは多少衰えの見えるものの袋も中の実も外形を保って、立派に色を付ける、、、。(2017年秋詠)
流れ行く水に落着き秋の川
暑さもやっと、、、。(2017年秋詠)
くくられて千屈萩色を忘れゆく
大師堂脇にある一叢の千屈萩(みそはぎ)、側を流れる用水路に水漬くほどになり荷紐で括られている。淡紅紫色の花はお盆の大師堂によく似合う。お盆を過ぎれば、当然のように衰えて色を失って行く、、、。(2017年秋詠)
早々と仕舞ふ路座売秋暑し
秋とは名ばかり、倉敷美観地区の路座売、、、。(2017年秋詠)
とんぼうの影透き通る日差かな
先日墓掃除に帰省して、空家だからしょうがないかと庭を眺めているとオニヤンマが一匹スーッと飛んできた。何だか見慣れないやつが来たぞと言わんばかりに暫くこちらを観察した後にまたどこかへ去って行った。何だかうれしくなった、、、。(2017年秋詠)
緩やかに風の撫で行く稲の花
故郷まで2時間ばかりの帰省だが、その間でも田圃の状態にはずいぶん差がある。早いところではもうすっかり色づいて稲刈を待っているような所もある。昔父が生きていた頃には、帰省する度にどの辺りの田圃がどうかとよく質問してきたものだ。春には田植を秋には稲刈を。その頃からの癖で今でも田圃を観察しながら車を走らせるが、もし父が生きているとすればさしずめ、ずいぶん休耕田が増えたね、と報告するところだろう、、、。(2017年秋詠)
秋夜明け光と陰の陰多く
秋になると何だか急に明暗がはっきりして、それも陰の部分が増えたような気がするのは私だけでしょうか、、、?(2017年秋詠)