つややかに匂ひ干さるる山椒の実

少し北へ上がって奥津湖畔にある施設で見かけた景です。山椒は実のなる木とならない木があります。我が家の裏にも鳥の運んだ種から何本も育っていますが、実のなるのは用水路脇の一本だけです。それも小さな木に今年初めて、まだ干すほどはありません、、、。(2015年秋詠)

出払ひしいつも鳴く犬山椒の実

曲がり角のお家の柴犬、通るたびに吠えるので、いつの間にかそれに慣れっこになって、こちらも適当にあしらっていた。それがある朝、声が聞こえず姿が見えない。そうなると寂しいもので、塀の中をあちこち眺めたが犬の姿はなく、代わりに山椒の木に色づいた実を見つけた。今まで犬に気を取られて気づかなかったのだろうと思いながら角を曲がると、向うから来る飼い主に連れられたその犬に出会った。どうやら外ではおとなしいらしく、済ました顔をして通り過ぎていった、、、。(2010年秋詠)

山椒の実いつも鳴く犬出払ひて

徒歩通勤の途中の柴犬、毎日通るのに毎日吠えられ、それが習慣になっていた。「お前のほうが後から住み着いたのに、うるさいぞ!」と、からかってやると余計に吠えるが、しっかりした鎖で繋がれているから大丈夫。それがある日、犬小屋が空っぽになっていた。「あれっ、どうしたのかな?」と庭を見渡すと実の生った山椒の木があった、、、。しばらく行くと、お婆さんに連れられておとなしく散歩するその柴犬に出会った。いつもと違い澄ました顔をしていた、、、。(2010年秋詠)

厨より猫叱る声山椒の実

我家では犬も猫も人間も叱られるのは一緒です。そんな事を言っても犬や猫には分からないだろうと思うのですが、犬も猫も逃げ出しもせずに、それらしい顔で聞いています。まあ、ひたすら耐えて、台風が通り過ぎるのを待つより他がない事は、教えたわけではありませんが、私と一緒ですから。(2000年秋詠)