春雪のどこか明るさ持て降れり

勝山に「タルマーリー」というパン屋さんがあります。先入観なしで行きましたが、最近ちょっと有名なパン屋さんらしいです。御前酒の辻本店さんなどがある通りに面した古民家を改造した小さなお店で、看板がないと古い空店舗といった佇まい。古い商家の土間のあたりが小さなお店、その後にパン工房、奥の住居部分の畳みの小部屋と台所の部分に設えたカウンターが小さなイートイン・カフェとになっています。その薄暗いそのカウンターでコーヒーを飲みながら、木枠のガラス窓越しに雪の降る裏庭を眺めるのは、まるで昭和に戻ったような懐かしさでした。ちょうどパンが焼かれている時間帯で、コーヒーを飲んでいる間に三回ほどブレーカーが落ちて停電になったのも一昔前のようでご愛嬌、、、。パンも美味しかったですよ、、、。(2013年春詠)

家出猫戻らず三日春の雪

夜出してやると朝には戻って窓のところで待っている。「ゆき」はそんな猫だった。何日か帰らないことは前にもあったが、それが猫の習性と理解していた。しかしその時は違った。一日目から変な予感がして、通勤の途中に姿を捜したりした。次の日も帰らず、三日目の朝が雪となった。大きな春の雪がしきりに降っていた。なぜだか解らないが、もう帰ってこない。ふっとそんな気がした。(2011年春詠)

春雪や単線電車灯し来る

真冬に降る雪よりも春の雪のほうが記憶に残るのはそのはかなさからだろうか。掲句は姫新線の院庄駅と美作千代駅との間、降りしきる雪の中を、前照灯を灯した電車が大きくカーブしながら近づいて来るのが見えた。まるで映画のワンシーンを見るようだった。※姫新線は電化されていないので、本当はディーゼル車です。(2000年春詠)