昔々の事になります。出張で行った福島での宿泊先は飯坂温泉の古びた旅館でした。ちょうど茸の採れるシーズンで、毎夜の食事に茸汁が出るのです。嫌いではないですが「これだけ続くとなあ、、、」と思い始めた頃に「どうしても断れない客があるので一晩だけ他の旅館に移ってほしい」という話があった。喜んで移った旅館の部屋は窓を開けると川が見え、前の温泉街の通りが見えるだけの部屋よりよっぽど良かった。温泉に浸かって汗を流しさて食事、やっぱり出てきたのは茸汁だった、、、。(2014年秋詠)
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鯉跳ねて山湖の秋を崩しけり
先日は跳ねない鯉を書きましたが、今度は跳ねた鯉です。正確には鯉と思う、とするべきでしょう。一瞬の音に向けた眼の先に、広がりつつある水輪、揺れる山の影、これは鯉に違いないと思ったのですが、実際の姿は見ていません、、、。鯉釣は今がシーズンのようです。早朝の散歩に出ると、寒い中で石のように動かない釣人を眼にします、このブログに何度も登場していただいた老釣師も、今年は暖かい昼間に、他の人とは外れた場所で連日眼にします、、、。(2014年秋詠)
ことごとく風に従ひ花芒
いつも寄る道の駅の裏側に出てみると、広場の向こうに思わぬススキの原っぱが広がり、おりからの強風に靡いていた。当たり前だが全部同じ方向に、、、。(2014年秋詠)
深秋の湯宿小さき道しるべ
国道429号線沿いの山の中にある小さな小森温泉、通る度に寄ってみたいと思いつつ寄ったことが無い。古びた建物が忘れ物のように建っている。小さな川が流れ、秋には紅葉が美しく、ますます錆びれた湯治場となって行くように見える、、、。(2014年秋詠)
夢にある覚める伏線菊枕
これは夢で、だからこの筋書きで、もうすぐ目が覚めるんだ、と分かっていながら夢を見ている時がある。案の定そう思っている自分に気づいて目が覚めてしまう。まあ、覚めているうちが花と言えなくも無いが、、、。ラグビーワールドカップ、日本は三勝一敗で予選を終えました。残念ながらベスト8入りは無理でしたが、良い夢を見させてもらいました。四年後は日本での開催、今大会が始まるまでは時期尚早と思っていましたが、これなら大丈夫でしょう。楽しみです、、、。(2014年秋詠)
秋深し暮しの音のよく透り
空気が澄んでくるせいか、秋が深まるといろいろな声や音が良く聞こえるようになってくる。まあ、高い音が聞こえると言う事は、耳はまだ大丈夫なのだろうと思う、、、。(2014年秋詠)
石臼の飛石六つ秋時雨
大原美術館の本館と分館の間にある新渓園、美観地区側にある小さな門を入ったところに粉挽き用の石臼を使った飛石がある。門に合わせて小振りの石臼を六個並べてある。表面の磨り減ったふくみ(隙間)の線が雨に濡れている、、、。さて、いよいよ今夜(と言うか明日の朝)にはラグビーワールドカップ日本アメリカ戦がある。どうかもう一度良い夢を、とOLDファンは願うのみです。もう十分に見させてもらってはいるのですがね、、、。(2014年秋詠)
コスモスを荷紐でくくり停留所
田舎の停留所は造りもしっかりしている。雨風もしのげるし、座布団まで敷いてあったりする。掃除も行き届き、周囲には四季折々の花が見られる。コスモスは弱いようで強いようで、やっぱり弱いような花。大きくなる割に根が張らず、雨風で倒れることが多い。大きくなりすぎた停留所の周囲のコスモスが、まとめて白い荷紐で補強してあった。白い紐がコスモスにはよく合う。コスモスは雑草なんだと思った、、、。(2014年秋詠)
鶏に日の斑のもやう黄落期
阿智神社にある大きな鶏舎、白色レグホンが二羽秋の日を浴びていた。人間なら大邸宅だが、大きな鶏舎に二羽の鶏はいかにも寂しい。落葉を始めた木の枝の影が鶏にまだらの模様を作っていた、、、。(2014年秋詠)
かまきりの卵赤子のふぐりほど
去年見つけた玄関脇の柱のカマキリの巨大卵、そのままにしておいたら、偶然夏に孵るところに出会った。ほんの数ミリ程度の緑の子カマキリが多量に発生して柱を降りてきた。親となって赤子のふぐり程もあるような卵を産む頃と違って、小さくて実に可愛いが、それぞれ一人前に鎌を持っているのが面白い。子カマキリはその日のうちに玄関から居なくなったが、あの中の何匹が成長して卵を産むほどに育ったのだろうか、、、。(2014年秋詠)