つややかに匂ひ干さるる山椒の実

少し北へ上がって奥津湖畔にある施設で見かけた景です。山椒は実のなる木とならない木があります。我が家の裏にも鳥の運んだ種から何本も育っていますが、実のなるのは用水路脇の一本だけです。それも小さな木に今年初めて、まだ干すほどはありません、、、。(2015年秋詠)

彼岸花咲いて墓域の明らかに

まだ多くはありませんが彼岸花が咲き始めました。掲句はちょうど彼岸の頃、久しぶりに遠回りをした散歩途中の墓地、墓地とそこへ続く細い道が彼岸花で囲われていました。今までそこに墓地があることも知りませんでした。彼岸の頃に咲くから彼岸花ですが、墓地に咲きやすいのも事実、そして花の形も、、、。(2015年秋詠)

寄れば去る都会育ちの蜻蛉かな

西川緑道公園での句。人間との距離感は危険度によって違ってくるのだろう。場所によっても違うし、たぶん時代によっても変わってきたのだろうと思う。蜻蛉が子供の絶好の狩の対象だった時代に比べるとずいぶん油断しているように見える。と思って手を出すと、やっぱりひらりと飛び立って、また一回りして元の場所に戻ってくるのだが、、、。(2015年秋詠)

玄関を訪へば鈴虫朗々と

所用で訪ねた近所のお宅、声をかけたが返事がない。帰ろうかと思いながら玄関の引戸に手をかけるとするすると開いて、開いた途端に下駄箱の上の大きな虫かごから鈴虫の声が聞こえて来た。それも賑やかに。もう一度、今度は鈴虫に負けないように大きな声をすると、奥のほうで返事があった。やれやれと思いながら、出てこられるまでしばしの鈴虫観察を、、、。(2015年秋詠)

ひつそりと秋の日の入る四畳半

いつの間にか太陽の角度が変わり、部屋の中に日差が入るようになっている。秋が暑いのはどうもこのせいではないかとさえ思えてきて、カーテンを閉めてみたりするが、やっぱり暑い。とは言え、もう少し我慢すれば、この日差が恋しくてたまらない季節が来るのだ、、、。(2015年秋詠)