どの顔も笑顔の地蔵曼珠沙華

吉備中央町本宮山円城寺での句です。道の駅「かもがわ円城」から反対側に少し入ったところにあります。715年開基とありますからずいぶん古いお寺です。岸田吟香が志を立てて初めて東京へ出る前に立ち寄って書いたという落書きがあります。岸田吟香はご存じなくても岸田劉生の麗子像ならご存知でしょう。岸田劉生の父上が岸田吟香です。余談ですが、吟香は美咲町の「たまごかけごはん」の創始者だそうです、、、。(2011年秋詠)

静けしやつばめ帰りし無人駅

吟行の下見に津山線の誕生寺駅へ寄ったのは夏の盛りだった。駅の前に知り合いの店があると聞いていたが、その店も無くなったらしく、無人駅に居たのは賑やかな燕だけだった。それから二ヶ月、句友の到着を待つ駅には燕の姿もなかった、、、。(2013年秋詠)

裏庭に狭き空あり十三夜

しまった!9月6日に書こうと思っていたのに、トラブルでバタバタして抜けてしまいました、、、。家の裏は屋根をくっつけてストックヤードにしているので、ほとんど隙間が無いのですが、あったのですよ三角形の小さな隙間が、ちょうどお月様がスッポリと見える、、、。(2013年秋詠)

ゆつたりと雀日をあぶ豊の秋

今年は天候不順のせいでしょうか、素人目には稲の実りが遅いように感じられます。例年だとこの時期の休日にはコンバインの音が賑やかなのですが、今年はちらほらです。晩生かも知れませんがまだ青い田も、、、。(2013年秋詠)

階を上りて秋の蝶に会ふ

階段を上って行くと、上のほうできれいな蝶が、とまるでもなく離れるでもなく羽ばたきをしている。もう少し観察しようとさらに上ると、蝶も合わせたように上って行く。やっと私が頂まで上ると、蝶は迷わず空中に飛び出して行った、、、。(2013年秋詠)

秋の川見てをるところ覗く人

吟行地を探して津山線のとある駅の近くを歩いていると橋があった。橋の上から覗くと水の澄んだきれいな川がある。魚影も濃い。少し先には公園らしきところも見える。欄干にもたれて考え込んでいると、通りがかった背広姿の老人、川に何か居るのだろうかと覗き込む。確かに居る。居るのだが、どこの川でも見かける鮠や鮒、珍しいものではない。やがて他に珍しいものを見つけられずに老人は去っていった。これを見ながら考え込んでいるのは俳人ぐらいのものですよ。結局ここは候補地から外したが、いつかのために、どこの駅かは伏せておこう、、、。(2013年秋詠)