軋みつつ首振る秋の扇風機

今日は処暑です。今年はとうとうエアコンを使わずに過ごしました。この軋みつつ首を振る扇風機には、今年はとりわけお世話になりました。節電にはなりましたが、頭の中はいつもボーとした状態で、結局のところ生産性は悪かったように思います。長年の贅沢病が、そう簡単に治るはずはありませんものね。(2010年秋詠)

苦瓜の触れて匂へり蔓までも

糸瓜、ひょうたん、朝顔、ゴーヤと植えてみましたが、グリーンカーテンにはゴーヤが一番でした。色合い、葉の大きさ、強さ、どれをとっても最適でした。それに収穫した実が食べられるのも良いですね。赤く熟れた実が突然にぱっくりと割れて、種が飛び出してくるのはちょっと不気味な感じがしますが、飛び出す種の周りが甘いのはご存知でしょうか。(2010年秋詠)

犬の鼻触れて落蝉生き返る

散歩していると落蝉に出会う。落ちたときのひっくり返った姿のままで力尽き、やがて静かに死を迎えるのだろう。そんなところに犬の鼻が近づいて来るものだから、蝉はおちおち死んでも居られない。息を吹き返した蝉はジジジジと激しく鳴きながら、またどこかへ飛んでいった。(2010年秋詠)

すがり来て蟷螂の腹やはらかし

蟷螂のお腹の中には別の生物がいるのをご存知だろうか。ちょうど輪ゴムを切ったぐらいの太さと長さの糸状で、黒い色をしている。輪ゴムのように丸まったり、伸びたり、クネクネと不気味な動きをする。少年時代には何度も見たが、見るまでの過程は書かずにおこう。(2008年秋詠)

退屈な塩辛とんぼ寄つて来い

蜻蛉の中で一番馴染みのあるのは、やはり塩辛とんぼではないでしょうか。見かけるのも良く見かけますし、蜻蛉自体もからかっているのだか、からかわれているのだか、近くへ寄って来ることが多いですね。とまっている蜻蛉に指をぐるぐる回して、頃合を見計らって、捕まえようとするとするりと逃げる。しばらくするとまた同じところに戻ってくる。やはりからかわれているのは人間のほうでしょうね。(2011年秋詠)

威銃犬と一緒に撃たれけり

午前七時、朝の散歩の心地よさに浸っていると、川向こうの田圃の陰からいきなりドーンと、その年の最初の一発が鳴り響いた。驚いたのなんの、犬と一緒に跳び上がり、心臓も飛び出しそうだった、、、。昔の威銃は風情があった。太い孟宗竹を切った手作りの筒に、カーバイトを入れ薬缶の水を注ぐ、アセチレンガスが発生した頃合を見計らって、火を点けたマッチを放り込む。ドーン!これを繰り返す。まあ大人の火遊びといった所で、子供たちは耳を押さえながら見ていた。(2008年秋詠)

夏明や隣家にコップ洗ふ音

目覚めれば朝のしじまの中に、水道の音と、コップの触れる小気味のよい音が、昨夜の宴の名残りのように続いている。気持ちの良い朝の目覚めだ・・・。子どもの頃の夏休みの朝は、母が台所で胡瓜を刻む音で目覚めた。食卓に胡瓜の無い日はなかったなあ。(2011年夏詠)

ドップラー効果蝉音の下行けば

ピーポーピーポーと救急車が近づいてきて、目の前を通り過ぎると途端にピーポーの音の高さが変わりませんか。あれをドップラー効果と言います。近づいてくる物から出る音は高く、遠ざかる物から出る音は低く聞えるのです。蝉音にドップラー効果なんて在る訳はありませんが、ニイニイ蝉の鳴いている木の下を通ると、そんな気がしませんか。(2011年夏詠)