店奥にこちら見る顔秋深し

某商店街吟行での句。平日の午前中ともなれば客の少ないのは致し方ないのだろう。店の灯りも少なめ、その奥のほうからこちらを見ているご主人らしき顔と目が合った。見れば客ではないのは分かるだろうが、多少は期待しているらしい心がその表情に見て取れた、、、。(2017年秋詠)

老人に添ひて白犬秋深し

角を曲がったところでいきなり自転車の女性に連れられた白犬と出会った。あやうくぶつかるところだった。「ごめんなさい」と言いながらよく見ると、何だか見たことがあるような犬。いつも老人と一緒だった白犬に似ている。「もしかして、以前おじいさんと散歩していた犬ですか?」「ええ、今年の1月ぐらいまではそうだったのですが、身体を壊して、、、。今は入院しているんです。それで私が・・・。」「そうですか、よく見かけていたのに、どうされたのかと思っていました。」心なしか白犬も以前より細くなって見えた、、、。(2017年秋詠)

秋深しベンチに語る老夫婦

西川緑道公園での景。朝の日差があふれるベンチ、二人の間にはサンドイッチと湯気をたてている飲物、静かに語り合いながら、まるで自宅の庭に居るかのような雰囲気の食事風景。公園が身近に、日常に溶け込んでいるように思えて、羨ましい景ではあった、、、。(2015年秋詠)

秋深し郵便局長幟出す

早いですね、昨日が年賀状の発売日だったようです、、、。昨年の晩秋のある朝、田舎の小さな郵便局の前を通りかかったら、局長さんらしい男性が赤い「年賀状」と書いた幟を出していた。霧が晴れてきて少し日差が見え出した朝の郵便局の前で、白シャツにネクタイ姿で幟を出しているその動作が、いかにも毎日の業務として板に付いているように見えて、少し可笑しくもあった、、、。(2014年秋詠)

色見本繰ればいろいろ秋深し

色見本だから色がいろいろあるのは当たり前ですが、、、。アンソロジーの表紙を決めるために借りた紙の見本帳を眺めての句です。次から次に出てくる微妙に異なる色、これはこれで悩んでしまう。この時は結局どの色にしたのだったろう、、、?(2010年秋詠)

秋深む朝の目覚めの肩口に

さすがに朝晩は寒さを感じるようになりましたね、、、。掲句はまだ働いていた頃、日々順調で、気持ち良く目覚めて仕事に出かけていた頃です。寝覚が良くないとこうは感じられない。最近はどうも良くない。早くから目覚めて、悶々といろいろな事を考えてしまう。そのうち外が白み始め、突然鵙の大きな声がしたりする、、、。(2010年秋詠)