枯葎風の音とも獣とも

時々こんな事があります。一瞬ドキッとするのですが、後何の音もしないので、やはり風だったのでしょうね。もしかしたら何かがジッと身を潜めてこちらを見ているかも知れない、なんて思うほうが楽しいのですが、我が愛犬は反応なし、、、。(2014年冬詠)

小夜時雨壁打つ屋根打つ心打つ

寒さと共に、県北の盆地は時雨の季節になりました。気がつくと雨の音がしている。おっと、洗濯物が出しっぱなし、と外に出てみるともう小降りになって日差が見えている。そんな感じで、風情があるとばかりも言っておられないのが時雨ですが、盆地には時雨がよく似合います。掲句は夜の時雨、音が寂しい、、、。(2014年冬詠)

ご自由にお取りください花梨の実

倉敷阿智神社の社務所、窓口に各種のパンフレットと共に花梨の実が置いてある。その傍に「ご自由にお取りください」の張り紙が。香りに誘われて一つ頂くことにする。出来るだけ形の良いものをと選ぶが、そこは花梨の実、それぞれに自己主張が強い、、、。掲句は昨年、今年はどうかなと先日の句会の折に覗いてみたら、ありました。今年はもう遅いのか二つだけ、、、。(2014年冬詠)

年の市母に読みやる値段札

歳月人を待たず、早いですね。もう十二月ですよ、、、。古い句ですが、こんな句を詠んでいました。母を買物に連れて行くと、母はこうして私に読ませて、値段や日付を確かめながら買いました。問題は父で、父と行くと、父は値段も日付もお構いなしで、次々とカゴに入れて行きます。すぐ側に同じ新しい日付の商品があるのに。ようするに、眼鏡を忘れて小さい字が読めないことを、悟られたくなかったのでしょうね、、、。(2001年冬詠)

精米所軒を灯して暮早し

近所の米穀業者、稲刈が始まる頃から年内ぐらいは忙しそうにされている。工場の外に早々と灯りを点けて、フォークリフトが忙しく走りまわっている。ちょっと遅く散歩に出ると、ちょうど土手の上からその光景に出会うことになる。職種は違うが、何だかなつかしい、それでいてちょっと寂しい気持ちになる。四年前の今頃は、、、。(2013年冬詠)

一雨に進む季節や新走

ちょっと(を通り越して)寒くなってきました。新走(あらばしり)は今年酒、新酒のこと、歳時記では秋に分類されています。昔は仕込みが早かったのですね。私はてっきり酒造りは寒い時期の仕事とばかり思っていました。と言うのも、私が子供の頃は田舎のお百姓の男衆の多くが、冬の間は酒造りの出稼ぎに行っていた記憶があるからです、、、。私はのんべえでは有りませんが、のんべえの皆様、お酒の美味しい季節になりましたね、、、。(2013年冬詠)

警備員銀杏落葉をながめつつ

倉敷中央通りの銀杏も、もう散っている頃だろうか。掲句は昨年の27日、通りに面した観光バス駐車場の警備員さんが、バスの出入りがないと手持無沙汰なのだろう、緊張感なく銀杏落葉を眺めている姿があった。ちょっと遠くから見るといい感じ、絵になる(いや、句になった)、、、。(2014年冬詠)

尻上げて足で日を蹴る川の鴨

11月15日が狩猟解禁日です。例年のことですが狩猟解禁日を過ぎると、一週間ぐらいは川の鳥の数が少なくなります。最近は猟師も空の薬きょうも目にすることが無いのですが、それでも解禁日を過ぎると確実に少なくなります。どこかに安全な場所があって、解禁日からしばらくはそこへ避難するように、本能に埋め込まれているのかも知れませんね。そして十日、川には賑やかな声が聞こえています、、、。掲句は昨年、日差を浴びながら水草を啄ばむ、安心しきった姿の鴨、、、。(2014年冬詠)