少年の学なりがたし青胡桃

この近くには自生している胡桃の木がたくさんある。胡桃と言っても鬼胡桃で、小さくて殻は硬く食用にはむいていない。子供の頃に採りに行ったのはこの鬼胡桃で、石でつぶしてわずかばかりの身を取り出して食べていた。初めて栽培種の胡桃を貰ったときには、その殻の柔らかさと中身の 多さに驚いたものだった。鬼胡桃の用途と言えば細工物に使うか、私の祖父もやっていたが、二個を手の中で転がすようにして手先の運動に使うかだ。今に私にも必要になるかも知れないので、今からそれ用に何個か集めておこうと思うのだが、青胡桃のときは目に付くのに、秋になり気づいた頃にはきれいに無くなっている、、、。(2014年夏詠)

山蟻の会えば挨拶石の上

山蟻は大きくて咬まれると痛い。子供心に怖かったのを覚えています。山蟻の名の通り、本物の大きな山蟻は山へ行かなければいなかった。ある時間違えてその蟻を何かと一緒に食べたことがあります。酸っぱくて思わず吐き出したら蟻だったのですが、あれが蟻酸と言うものなのでしょうね。掲句は本山寺で久しぶりに見た山蟻、大きいので良く見えました(笑)、、、。(2014年夏詠)

降りだして蜘蛛の囲の蜘蛛ゆれ始む

面白いことを発見したと、こんな句にしてみました。大きなクモの巣の中央で動かないクモを見ていたら、雨が降り出したとたんに自分で巣をゆすりだしたのです。それも相当大きく、ユッサユッサといった感じで。これに何の意味があるのか分からないのですが、新発見、、、!(2014年夏詠)

緑蔭に入りて風のなすがまま

句会帰りに寄った道の駅、裏に田圃が見渡せる広場があり、大きなケヤキの木の下にベンチが置かれている。暑い日だった。自動販売機で買ったアイスコーヒーを傍のテーブルに置き、ドッカとそのベンチに座ると、後はもう風のなすがまま、しばらくは動く気になれなかった、、、。(2014年夏詠)

水口に旅のはじまる根無草

ついこの間田植が終わったばかりなのに、今朝見るともう浮草が発生して、排水口あたりに集まっています。毎年同じように繰り返されることですが、自然って不思議なものですね、、、。さてここから浮草の旅が始まるわけですが、いったいどこまで流れて行くのでしょう?海までたどり着けるのでしょうか?なんてことを考えたりします、、、。(2014年夏詠)

現とも夢とも明けの時鳥

年に何度かこんな朝があります。夢の底でホトトギスの声がする。「あぁ、ホトトギスだ」と思いながら目を開けると外はまだ白みかけたばかり、そのまままた眠りに落ちていきます。次に起してくれるのは雀の声、この時には外はもう完全に明るくなっています。この気持ちよい時間、いったいどれくらいの時間が経過しているのでしょう。長いようでもありますが、実は短い時間での出来事なのかも知れません、、、。(2014年夏詠)

風一閃日傘さらはる神の宮

まるで神の悪戯、女性が日傘を畳まずに横に置いて、拝殿の前に進み出たちょうどその時、合わせたように強い風が吹き、女性が手を伸ばす間もなく、日傘が転がって行ったというシーンですが、説明が無いと分かりませんね、、、。(2014年夏詠)