老犬の眠り白南風かぎりなく

去年は夏を越せないかなと思っていた老犬アリス、夏を越し、秋、冬、春を越し、再び夏を過ごしています。全くの自然体で、白南風の吹く中で、ピクリとも動かず眠っている姿を見ると、今年こそホントにダメかなと思うのですが、またしてはムックリと起き上がり、大きな声で餌を要求するのです、、、。まあ、食べているうちは大丈夫かな、、、。(2012年夏詠)

炎昼の埴輪の口の開きしまま

倉敷美観地区にある倉敷公民館、この正面の道を渡ったところにある大きな埴輪です。「ギャラリーたけのこ村」と書かれた台座の上に二体置かれています。あ、そうそう、口は年中開きっぱなしです。私みたいなものです、、、。倉敷公民館は涼しいので、ちょっと一休みして句作を、、、。(2011年夏詠)

狂ひたる蝉一晩を鳴き明かす

我家の庭からも毎年何匹もの蝉が出てくる。時たまこういう蝉がいる。暑くて眠られない夜が、よけいに眠られなくなってしまう。困ったものだが、かと言って夜中に庭に出て昆虫採集も出来ないし、もんもんとして朝を迎えることになる、、、。(2008年夏詠)

草田男に採られし話水着着て

ロッカールームで着替えていると、先日登場していただいた老人が入ってきた。「つかぬ事を伺いますが、俳句をされるんですなあ」「ええっ、どうしてご存知なんです?」「いやあ、車のナンバーが819なんで、一ぺん聞いてみよう思うとったんです」「ああ、そうですか。何でご存知なのかとびっくりしました。はい、そうなんですよ。俳句、お好きなんですか?」「いやいや今はしようらんのですがな、若い時にね、長いこと入院したことがあったんですよ。それですることが無うて退屈なもんで俳句を勉強したんです、、、。一ぺんだけ中村草田男に採ってもらいました。”病院・・・ベッド・・・大昼寝(早口でよく聞き取れなかった)”だったかな。それがもう、うれしゅうてうれしゅうて、今でも忘れられんですなあ」とにこやかな顔で、心底うれしそうに話された。今は全くされていないようだが、またいろいろ聞いてみようと思う、、、。(2013年夏詠)

尾を立てて猫がすりよるあつぱつぱ

通りがかりに見たある田舎町の裏通りの夕方です。勝手口から出てきたあっぱっぱ姿のお婆さん、片手に団扇、片手に鍋、鍋には餌が入っているのでしょう、一緒にすりすりしながら尾を立てた猫が出てきました。お婆さんは戸の外の地面に鍋を置くと、さっさと中へ、猫はすりすりしていたことなど嘘のように、鍋の中へ頭を突っ込んでいました、、、。(2011年夏詠)

白南風や大鉄塔に大落暉

句とは関係のない話です。午後のプールはお年寄りが多い。と言うとお前も年寄りだと叱られそうですが、私などよりもう少し年配のお年寄りです。泳ぐよりもウォーキングとおしゃべりを楽しんでおられます。そんな中のよく一緒になる八十前ぐらいの老人、先日ロッカールームでこんな話をされていました。「若い頃に、わしの爺さんがよう椅子に座って着替ようたんですがな。それを見て、ほんに横着な、なんで立って着替えんのかと思ようりました。それが何のこたあない、気がつきゃあわしが同じようにしとりますがな。爺さんが座って着替ようた意味がやっとわかりましたわあ、ハハハ」「ハハハ」と一緒に笑ったが、何と答えたらよいのか、、、。(2000年夏詠)

夏草や選挙事務所の在りし跡

古い句を探したらこんな句がありました。何の選挙だったか記憶にないのですが、国道沿いの空地に建てられたプレハブの選挙事務所。選挙が終り、数ヵ月後に通ると跡形もなく、そこには夏草が茂っていました。どなたの事務所だったのか、結果がどうだったかも記憶にないということは、あまり関心がなかったからでしょうか、、、。今日は投票に行きます。結果は見えているような気がしますが、、、。(2000年夏詠)