北風やコークス匂ふ街の空

まだ務めていた頃、北風の強い冬の日に外に出るとどこからともなくコークスの匂いがしてくる事がありました。冬雲の隙間から時々薄日が差して、隣の工場の金属の旗竿がゆれる旗紐に打たれてカンカンと音を立てている。そんな日です。昔のストーブの、暖かい何だか懐かしい匂いです、、、。(2016年冬詠)

また一人去りて北風吹く日かな

何となく詠んだ句です。掲句とは関係ありませんが、プール通いも五年目です。やはり会う人は変わって行きます。見かけないと言っても、もともと知らない人なのですぐ気づくわけではありませんが、ある日ふとしばらく見かけない事に気づいて、どうされたのかなあと思うのです。その割に新しく来る人は少なくて、ちょっとブームが去ったのかなあと思います、、、。(2015年冬詠)

北風や塗料のにほふ工場街

土地にはそれぞれ匂いがあって、例えば工場街であれば、それは油の匂いであったり塗料の匂いであったりする。掲句は岡山のJRの機関区の近くの工場街、一角に小さな公園がある。時たま子供連れの若いお母さんに出会うぐらいで、いつも閑散としている、、、。(2013年冬詠)

北風や廃工場の玻璃戸鳴る

大きな道であるとか、橋、川などで、どうしてもテリトリーが決まってしまう。同じような距離なのに、国道を渡って散歩に行くのは勇気が要る。意を決して国道を渡り脇道へ入って行くと、「へえ~っ、こんな所に」と思うような所に新しいマンションが幾つも建っていたり、林の中に神社や寺があったりする。結構楽しいなあと思いながら歩いていくと、閉じられた工場があった。何の工場だったのだろう、ずいぶん背が高いな、あまり傷んではいないから最近閉めたのかな。なんて事を考えながら周囲を巡っていると、突然近所の犬に吠えられた。(2002年冬詠)