雨止んでまた鳴り始む威銃

威銃が鳴るのは散歩コースから吉井川を挟んだ南側の山際に広がる田圃。山に近く日暮も早いからだろう、北側のこちらよりも田植も稲刈も少し早い。威銃は八月に入ると鳴り初め、約一か月続く。きちんとタイマーで管理されているらしく、朝は七時に鳴り始め、間隔は十五分、夕方六時には鳴りやむ。雨の日に聞こえなかったのは単なるこちらの勘違いだったのかも知れないが、雨が上がって散歩に出ると、待っていましたとばかりに、ズドーン、、、。(2016年夏詠)

威銃鳴りつつ雀太りつつ

「威銃ゥ、あんな物ぁ怖いこたぁありゃあせんで、ちょっと飛び上がって見せるだけじゃが」「せえでもなあ、ちいたあ効果がねえと、農家の人に気の毒じゃからなあ」とでも言いたげな雀の群が、威銃から少し離れた田圃に群れて姦しい、、、。(2014年秋詠)

威銃犬と一緒に撃たれけり

午前七時、朝の散歩の心地よさに浸っていると、川向こうの田圃の陰からいきなりドーンと、その年の最初の一発が鳴り響いた。驚いたのなんの、犬と一緒に跳び上がり、心臓も飛び出しそうだった、、、。昔の威銃は風情があった。太い孟宗竹を切った手作りの筒に、カーバイトを入れ薬缶の水を注ぐ、アセチレンガスが発生した頃合を見計らって、火を点けたマッチを放り込む。ドーン!これを繰り返す。まあ大人の火遊びといった所で、子供たちは耳を押さえながら見ていた。(2008年秋詠)