春疾風植ゑしばかりの鉢倒す

ちょっと一休み、と植えたばかりの花の鉢をブロック塀の上に置いて家の中へ、しばらくして出てみると鉢は塀の下で見事に、、、。風が強いなあとは思っていたのですが、ちょっと油断を、、、。(2015年春詠)

初桜言ふて強面くづれけり

ちょっとまだ早いかなと思いつつこの句を、、、。朝の散歩で時々会う、昔はさぞや怖い人だったろうと思える老人。出会い始めた頃には服装も、携帯で誰かと話している口調も、本当に怖そうな人だった。それが一時見なくなり、次に見るようになった時には顔はそのままだったが、身体が不自由なようだった。いつも間合いを計ってこわごわと挨拶をしていたが、掲句の日、私が桜を見上げていると近づいてきた老人は、いきなり「咲いたなあ」と言って、何とも言えないクシャクシャの笑顔を見せた。それ以後も間合いを計って挨拶をしているが、前ほど緊張はしなくなった、、、。(2015年春詠)

陽炎や踏切越ゆるシニアカー

時々シニアカーを見かけるが一時的なもので、しばらくたつといつの間にか見かけなくなってしまうことが多い。単に行動範囲が変わっただけなら良いのだがと思ってしまう。掲句のシニアカー、前カゴにケースに入ったゲートボールの道具一式らしき物を載せ、ゆっくりと踏切の坂道を越えて行った。見かけ始めた頃は毎日見かけたが、今は見ることが無い。ゲートボール場自体にも今は人影が無い、、、。(2015年春詠)

彼岸会や若き住職子沢山

実家のお寺の住職は若くて、年齢から見れば自分の子供のようなものですが、よく勉強されていて法話を聴くのが楽しみです。と言ってもお寺の行事に参加する訳でもなく、父母の法事の時ぐらいのものですが、父の忌日が春の彼岸、母の忌日が秋の彼岸とこれまた横着者の息子には都合が良いのです。昨年が父の十三回忌、来年が母の七回忌で今年はちょうどその隙間で何もなし、お寺への足も遠のきそうです。その住職、たまにお会いするその度にお聞きする子供の数が増えているような、、、。(2015年春詠)

挨拶の土手の上下春夕焼

日が長くなって、あれこれしている内に散歩に出るのが夕焼けの時刻になってしまった。いつもの通り土手の途中の坂道を河川敷の公園に下りる。すれ違うように上の道を来る人がある。こちらもいつもと違う知り合いだが珍しい人だった。ちょうど土手の上下で挨拶を交わす形になった。お互いに珍しい人に会ったと笑って別れたが、冬の夕焼けではこうは行かない、、、。(2015年春詠)