バンダナの下は坊主か冬遍路

「室戸」その2 季節がら歩き遍路は少ないですが、それでも何人かには会いました。掲句はその中の一人、白衣に、菅笠を付けたリュックを背負い、頭にはバンダナを巻いた、まだ若い体格のしっかりしたお遍路さんでした。室戸岬の手前の太平洋沿いの国道で会い、岬にある最御先寺まで先になり後になりしながら遍路道を上りました。後ろから見ながら、きっとバンダナの下は坊主だろう、坊主でないと様にならない、と思いましたが、見た訳ではありません、、、。(2011年冬詠)

浦の字の続く地名や冬の旅

「室戸」その1 もう三年前になりますが、四国の阿南市に勤務していた頃に、思い立って一日休みを取り、一人で室戸岬まで吟行したことがあります。その時の十句を「室戸」としてまとめましたので、それを今日から連続して書こうと思います、、、。まずは旅の始まり、ホテルから会社とは反対方向へ走って室戸へ向かいます。太平洋沿いの国道55号線を走っていた時の句です。海辺の地方では当たり前でしょうが、山の中に住んでいる私にとっては、標識がある度に出てくる地名の「浦」の字さえもが珍しく、新鮮に感じられるのでした、、、。(2011年冬詠)

空すべる模型飛行機冬ぬくし

散歩コースにある河川敷のグランドは電線がないので模型飛行機を飛ばすにはちょうど良いようだ。昨年の冬に見た掲句の模型飛行機はエンジン付のグライダーで、静かに晴れた冬空を滑っていた。天気が良かったので犬と一緒にしばらく見ていたら降りてきた。主翼が2メートルほどもある大きな飛行機で、操縦席にはちゃんと小さなパイロットの人形が座っていた。操縦していた30代後半と思える男性に聞くと、燃料はバッテリーで1回の充電で40分ぐらいは飛べるらしい。道理で静かなはずだ。「今日は暖かくていいね」と言うと「いやあ、じっとして操縦していると結構寒くて」と言いながらも、顔は十分満足そうだった、、、。(2013年冬詠)

初景色コトコト朝の一両車

我家のそばを通る姫新線は、通勤通学の時間帯は二両編成、他の時間帯はほとんど一両だけです。掲句はちょっと遅めに散歩に出た昨年の元日の朝、例によってコトコトと一両だけのディーゼル車が過ぎて行きました。いつもよりのんびり走っているように見えたのは単にこちらの心の持ちようなのでしょうね。この景色を見るようになってもう三十年、時は流れるものです、、、。(2014年新年詠)

初詣屋台に刃物選びをり

古い句です。真庭市の木山神社、ここへ初詣に行きだして二十五年ほどになります。その間に社務所は新しくなるし、吹きっさらしだった拝殿も板戸で囲われて良くなりました。その代わり境内の屋台はずいぶん減りました。掲句はその減ったお店の一つ、当時出ていた新見市の「松水」と言う鍛冶屋さんです。刃物や鍬や、いろいろ買いましたが、そのどれもが使いやすくて、今でも立派に使えていますよ、、、。(2000年新年詠)

雪の夜の億万浄土みな静か

古い句です。他の記事を用意していたのですが、大雪が降りましたので差し替えです、、、。適度に雪の降るこの地ならではの感慨かも知れません。雪深い地方に住まわれている方々にすれば、早く過ぎて欲しいだけの季節かも知れませんね、、、。(2001年冬詠)

初夢や水湧くやうに句の生れ

こういう夢を見たかった、、、。そう言えば若い頃と比べると、夢を見ること自体が減ったような気がするのですが、皆様はいかがでしょうか。夢は見るけれど記憶していないだけかも知れませんね。どちらにしろ眼が覚めるのだけはやけに早くて、困ったものですね、、、。(2014年新年詠)

電線に黙の鳥たち大旦

明けましておめでとうございます。ありきたりですが本年もよろしくお願いいたします。大旦(おおあした)は元日の朝のこと、いかにも年の初めらしい良い言葉ですね。ですが、人間を除けば、まあどうでも良いことで、何とか年の初めの一句をと見上げた夜明けの電線に、鳥たちは静かに並んでいました。まてよ、普段は賑やかだが、とつらつら考えた末に思いついたのは、もしかしたら除夜の鐘や年越しの花火の音で、鳥たちも寝不足なのではなかろうかという結論ですが、当たっているかどうかは鳥に聞かないとわかりません、、、。(2014年新年詠)

枕辺に閉づる句集や除夜の鐘

初心の頃の大晦日の句です。今では読みかけの句集が何冊も積んだままで大晦日を迎えています。上には多少埃も、、、。今年も一年ご愛読ありがとうございました。四苦八苦しながら続けていますが、続けていけるのも皆様の励ましのおかげです。来年もよろしくお願いします。それでは皆様良いお年を、、、。(1999年冬詠)