二階より望む燕のかよひ道

二階に限ったことではないが、高い所から眺める景色には心惹かれるものがある。二階より三階、三階より屋上と、高くなるたびに新しい景色が広がる。屋上まで来ると、それ以上は無理なので、翼が欲しいと思うようになる。叶わぬ夢、、、。掲句、我家の二階から眺めた燕の風景、虫を捕らえる時は自由に飛びまわっている燕も、それを巣に運ぶときは同じコースを通るようだ。空に道があるように、、、。(2011年春詠)

伸びきつて犬が寝てをり紫木蓮

天気の良い日の午後だった。何の用事だったか、通勤で通る道を昼間に通った。いつもは長い紐を伸びるだけ伸ばして吠える柴犬が、咲き誇る木蓮の木の下に寝そべっていた。通り過ぎる私を、前足の間に首を置いたまま、上目遣いに見ていた、、、。(2003年春詠)

小川にて終わるダム湖や桃の花

国道429号線を知ってからは、倉敷、総社方面へはほとんどこの道を通る。唯一狭いのが旭川ダム沿いの個所、片側がダム湖の曲がりくねった細い道。ここを抜けると、ダム湖へ注ぐ川沿いの広い道へ出る。川の水量はシーズンによるが、少ない時はダム湖同様ほとんど干上がっている。当たり前のことだが、ダムの終点は小川だった、、、。(2010年春詠)

雨一夜水の形に花の屑

桜は毎朝散歩に行く土手の、舗装された道の両側に植えられています。ここへ引越してきたときには、まだ背丈にも満たない木でしたが、三十年近く経ち見事な桜並木になりました。多くはありませんが、毎年見に来られる方もあります。植えられたのは老人クラブの方々と聞いていますので、そのほとんどの方がすでに他界されたと思いますが、そのうち何人の方がこの立派に咲いた桜を見られたのでしょう、、、。近くに車を止めベビーカーを降ろす若い夫婦連れを見ながら、ふとそんなことを考えていました。(2010年春詠)

羽音して落花しばらく続きけり

鳥の羽音には夢がある。例えば頭上を過ぎ行く鴨の群の撓るような強い羽音には、渡り行く旅路の果ての私の知らない世界のことを想う。庭の椿に来る密やかな羽音には、今蜜を吸っているであろう小鳥の見えない姿を、周囲を気にしながらのその仕草とともに想う、、、。掲句は足守吟行のおりの句、飛立ったのはヒヨドリだったろうか、、、。(2008年春詠)

花冷えの校舎の屋根の午笛鳴る

私が通った小学校の木造校舎の屋根にはサイレンがあり、朝六時、昼十二時、夕方五時に大きな音で時を知らせた。その音は、学校から二キロメートルほど離れた私の家でも聞こえるほどだった、、、。帰省した花冷えのする日、父はお茶を淹れながら、私に小学校の閉校が決まったことを伝えた。父もまた同じ小学校の卒業生だった。子どもの数は減っているし、前々からあった話だが、いざ正式に決まったとなるとショックで、余計に寂しく感じるものだった、、、。話している最中に昼を告げるサイレンの音が小さく聞こえてきた。これがこのサイレンを聞いた最後になった、、、。午笛がサイレンなのかどうか、実のところ不明です。(1999年春詠)

花万朶空に日陰のなかりけり

満開の桜があり、雲一つ無い空がある。他に何が必要だろうか、、、。津山吟行での句会場にと思っていた作州城東屋敷の座敷が借りられることになり、市役所まで手続きに行った。担当の部署は市庁舎の五階にあった。来意を告げると、一番奥の席で窓を背に電話されていた方が出て来られた。簡単な書類を書き「すぐに許可証を発行しますから」と言われるので、待つことにした。手持ち無沙汰で、ぐるりと見渡すと、南側の広い窓の正面に鶴山公園が見えた。この位置から見る鶴山は初めてだった。まさに満開を迎えようとする山は、全体が桜色に染まって見えた。きれいだった、、、。ほどなく許可証は出来た。「ここはいいですね、鶴山が正面に見えて。初めてです」と言うと、「ええ、いいでしょう、五階だけなんですよ。こちらからは衆楽も見えるんです」と席のあった後側の窓を示された。市庁舎のすぐ下が衆楽園だった、、、。昨日下見に行った城東屋敷で、管理人の女性二人が「担当はMさんです」「あの人、ちょっと偉くなったんだったね」と話していたことを思い出して、すこしだけ可笑しかった、、、。(2010年春詠)

定年などどふでもいいや花の昼

定年まで二年を切って、事務上の煩わしい話が出てきた頃の句です。しかし再雇用の話もありましたし、内心では定年で退職出来るとは思っていませんでした、、、。それがひょんな事から自由の身になり、すでに一年と二ヶ月を過ごしてしまいました。これで良いのやら悪いのやらわかりませんが、経済的な面を除けばまんざらでもない、、、。(2010年春詠)

万愚節犬にもありし泣黒子

すでにご推察のとおり嘘です。犬に黒子はありません、、、。4月1日になれば「割り箸を使ったメンマの作り方」を思い出します。実に面白い記事でついつい仕事中に夢中で読みました。探したらまだありましたので、暇な方は読んでください。場所はここです。(2013年春詠)