春昼のたつぷりと水使ふ音

近所から聞こえてきた音。蛇口から勢いよくバケツの底を打ち、その勢いのままに音の高さが低く変化し、溢れる寸前のところで蛇口がしまる。ほんの少し間が空き、その水を勢いよく丸ごと何かにかけるような音。少し間が空きバケツを置く音、また蛇口から勢いよく水が、、、。と、それが何度も繰り返される。まったく声は聞こえない。わざわざ見にも行けないのだが、その水の使いっぷりが何とも気持ち良く聞こえてくるのだった、、、。(2013年春詠)

春昼の訛くすぐつたき茶房

昨日と同じく茶房いかしの舎での句。いつもこうなのか、たまたまなのか、茶房の客は句友を除けば常連と思われるそこそこ歳の行った男性二人、店の若い女性相手に会話が弾んでいた。会話はコテコテの岡山弁、妙に懐かしいような、くすぐったいような気分になるのは、子供の頃に親しんだ故郷の訛に近かったからだろう、、、。(2014年春詠)

春昼の鴉水飲むにはたづみ

河川敷の公園に深い轍がある。普段はただの轍だが、雨が降ると水溜りになる。天気の良い日だった。前日の雨で出来たその水溜りの側に、一羽だけ降りた烏が水を飲んでいた。別に、そこで烏が水を飲もうが水浴びをしようがどうでも良いことなのだが、人間としての目から見ると、すぐ側にきれいな川があるのに、あえて突然に雨で出来た水溜りを水飲み場にすることは考えられないことで、不思議な気分で眺められた。という、どうしようもない句、、、。(2014年春詠)

新社員足に慣れないハイヒール

普段の暮らしの中でスーツ姿の女性といえば、図々しくやってくる薹の立ったセールスレディーぐらいのものだから、たまに行った岡山の街中でいかにも新入社員と言った感じのスーツ姿の女性を見るとすごく新鮮な印象を受ける。慣れないハイヒールのぎこちない、それでも颯爽と前を向いて進む姿には、思わず「がんばれ!」と言いたくなってくる、、、。(2013年春詠)