連雀の木々を移れば声もまた

小鳥の名も知っているようで知らないことが多い。でもって歳時記に出ている小鳥からそれらしい連雀にしたが、ほんとうのところは分からない。昔、生垣の中に見つけた巣を雀のものと思って話していたら、野鳥の会の人がそれは鵙でしょうと教えてくれた。今ははっきり、鵙と雀は見分けられるが、、、。葉の落ちた桜並木にはいろいろな小鳥が来る。みんなでおしゃべりをするように鳴きながら木々を移って行く姿が愛らしい、、、。(2013年秋詠)

尉鶲ひそと来てをり背戸の藪

何を思ったか、ジョウビタキが一羽、玄関の前の梁の上で一冬を越したことがある。昼間はどこかへ出かけて、夜になると戻ってきた。最初はどうして玄関前に鳥の糞があるのか分からず、首を傾げてばかりいたが、ある夜ふと見上げた梁からお尻が覗いていた。こちらが気づいているのを知っているのか、知らないのか、ひたすら動かないでお尻を出していた。じっくりと観察した結論は大きさとお腹の色からジョウビタキだった。春になると戻ってこなくなった。翌年また戻ってくるかと楽しみにしていたが、結局戻っては来なかった。裏の藪にジョウビタキはしょっちゅう姿を見せてくれるが、同じ鳥かどうかは分からない、、、。(2013年秋詠)

門川に音暮れ残る芋水車

夕暮の門川に何やらコトコトコトコト音がする。近寄って見ると、ひと目で手作りと分かる真新しい芋水車が回っていた、、、。幼かった頃に、父がどこかで見てきたのだろう、自分で手作りをして家の前の小川で回していた。得意そうに見せてくれた水車の中には、洗いあがった里芋が真っ白に光っていた。しばらくは使っていた記憶があるが、壊れたのかいつの間にか見かけなくなった。二台目を作るほどは興味がなかったのかも知れない、、、。(2013年秋詠)

幾重にも脱ぎ散らかして蛇穴へ

河川敷の公園の岸辺は金網で覆った石積みのような構造になっている。石と石の間には隙間が多く、それに暖まった石には保温効果もあるからだろう、多くの蛇が住み着いている。覆っている金網が、これまた脱皮をするのに都合が良いようで、金網を縫うようにしてたくさんの脱いだ皮が残されている。蛇もそろそろ動きが緩慢になってくる頃、夏場は出会うと逃げ出す蛇が、動かないでこちらを見ているのは、ちょっと不気味。ちなみに、蝮は夏場でも逃げ出さないが、冬眠前のこの時季も要注意らしい、、、。(2013年秋詠)

烏瓜夕日あまねく野を照らし

烏瓜は晩秋になると途端に存在感を増してくる。それまでは葉の色も薄く、花もモヤモヤとした白で、ひそかに成長を続けている。それが晩秋になり、他の植物が衰えを見せる頃になると、突然現れたように赤く熟れた実を見せるようになる、、、。(2013年秋詠)