声がして鳰の浮巣はあの辺り

吉井川の私が散歩する側は広い河川敷があり公園になっている。川を挟んだ向こう側は岸辺に山が迫っており、ほどよく緑が茂っている。笑い声のような鳰の声が時々聞こえてくる。声はすれども姿はない。浮巣もまだ見たことがないが、きっとあの辺りなんだろうと想像している。もう少しすれば浮いたり沈んだり、小さな姿が見えるようになる、、、。(2009年夏詠)

夏蝶の二頭もつるることもなく

とある午後の土手の並木の木陰での景、大きいから落ち着いている訳でもないだろうが、黒い揚羽が二頭、優雅に舞っていた、、、。定説は無いようですが、なんで蝶は一頭、二頭と数えるのでしょうね、、、?(2013年夏詠)

川に犬入れて見てゐる薄暑かな

ラブラドールレトリーバーはどの犬も水が好きなのかと思ったがそうでもないらしい。近くの表具屋さんのところのラブラドールは、「水は苦手だけど走るのは大好き」と、いつも自転車と一緒に走り回っている。だからかどうか、うちの愛犬「もみじ」よりずいぶんスマート。うちの「もみじ」は真冬でも水に入りたがるぐらいに水が好きだが、「いくらなんでも後の手入れが」と、こちらの都合で禁止、五月から解禁となる。で、土手から少し降りた川の中に首まで浸かり、上目づかいにこちらを見ているのだが、この時季になると、それを見ているこちらの額には汗が滲んでくる、、、。(2013年夏詠)

吸ひ込まれさうな気のする夏のダム

勢いよく水を吐く夏のダムを上から覗いていると、なんだか吸い込まれそうにな気分になって来る、、、。この項を書こうと、もう一度苫田ダムを見に行ったら、吸い込まれそうな放流はしていませんでした。が、放流は無くても、やはり吸い込まれそうでした。今回は下から見てみようと、下流からダムの下まで行ってみました。あまり訪れる人は無い雰囲気でしたが、なんと河鹿蛙の声が聞こえるのです。これはたぶん穴場じゃあないかと思います。もっとも、これを読んでいただいている方には、たぶん縁のない場所ですね、、、。(2013年夏詠)

艶やかに光返して夜の新樹

何より外から帰った時に灯りが欲しい。それに防犯の意味もある。ということで、家の周囲に何箇所もセンサーライトを付けています。通りがかるとパッと明るくなって、離れると暗くなるというやつです。確かに便利なのですが、感度の調整が難しい。風に木の枝が揺れても灯る、野良猫が通ると灯る。で、夜中に突然玄関の外が明るくなったりすると、結構ドキッとするものです、、、。でもこの時季外に出ると、途端に応えるように、闇の中から木々の緑が返してくれる光は、なんとも言えず柔らかく美しい、、、。(2013年夏詠)

廃校の跡の裸婦像夏兆す

以前から車で走っていて見える道端の裸婦像が気になって、きっと廃校の跡なんだろうと思っているのですが、止まって見ていないので、本当のところは分かりません。像の力強い印象と周囲の風景から何となくそんな感じがしています。山の中です、、、。(2010年夏詠)

どの路地を行くも潮の香浦の夏

宇野港での句。海の傍なんだから当たり前ですが、山の中で暮らしていると、潮の香りぐらい新鮮なものはありません、、、。同じように、海の近くで暮している人は、山の中に行くとむせ返るような緑の匂いを感じるのでしょうか、、、。(2013年夏詠)