立春の卵産んだと鶏の声

養鶏場は別として、鶏を飼う家は少なくなってしまった。掲句の鶏ぐらいのものだろう、この近くで飼われているのは。少し遅めに朝の散歩に出ると、ちょうど卵を産む時間ぐらいになるのだろう、田圃の向う側の農家の辺りから、得意そうな大きな声が聞こえてくる、、、。さて、立春には卵が立つという話はホントかウソか、実際に試した事がありますか、、、?(2014年春詠)

マンションの満室御礼春の果て

こんな句があった、、、。長い間同じ道を通って会社へ通ったが、その間にも途中の風景はずいぶん変わった。田圃の畦道のようだった道が舗装され、広くなった途端に家が建ち始めたのもずいぶん前だった。それでも長い間その周辺には田圃が残り、水音や蛙の声が聞こえたが、作られる方が年老いたからか、あるいはブームなのか、次々にマンションが建ち始めた。TVで目にする会社の幟がいくつも風に揺れていたが、なかなか埋まっていく気配はなく何年かが過ぎ、掲句の日が来た。通りかかると、真新しい満室御礼の看板が、、、。(2011年春詠)

雀の子虫に遊ばれゐたりけり

朝の散歩をしていると、突然子雀が舞い降りた。見ると大きな虫を咥えているが、どうやら上手く咥えられなくて降りてきたものらしい。まだ生きている虫も必死で動いている。なかなか面白い攻防で、しばらく足を止めて眺めたが、そのうち咥えどころが良かったと見えて、子雀は飛び立って行った、、、。(2013年春詠)

降り止めば蘂も降り止む暮春かな

消費税の値上げで郵便料金が上がり、はがきの切手代が52円になった。俳句雑誌の投句はがきに、買い置きしてある50円切手を一枚貼って、あと2円を探したが見つからず、やむを得ず近所の郵便局へ出かけた。男性の局長に女性局員二人の小さな郵便局が繁盛していた。窓口ではがきと2円を出すと「あ、切手ですね、貼って出しときましょうか?」「ええ、お願いします」「領収書は?」「要りません」私の声に気づいた顔見知りの局長がこちらを見てペコリと頭を下げた。私もペコリ、忙しそうなのでそのまま帰った。それだけの事なのだが、あの美人の女性局員も私のように、ベロリと舐めて切手を貼ったのだろうか、、、?(2013年春詠)

玄関を開けて遊ぶ子五月来る

五月になりました。会社勤めの頃は五月の連休が楽しみでした。職を辞して毎日が休みになってみれば、別にどうって事はないなあ、、、。掲句、休日のちょっと遅めの散歩で見かけた風景、玄関先で遊ぶ子を見ることも少なくなったなあ、、、。(2013年春詠)

ザックリと刃の音やはし春キャベツ

プールで泳いだ後にジャグジーに浸かりながら盗み聞きしたおしゃべり三人組の話では、春キャベツは玉になり難いらしい。だから「巻かなくても少し伸びたら採って使うんで」と言っていた。そういえば我家の三本のキャベツも葉っぱばかり大きくなって、いまだに玉にならない。今ここから覗いてみると、大きな葉っぱの上に今朝の雨が玉になって光っている。まあいいか、青虫の餌ぐらいにはなるだろう、、、。(2012年春詠)

蛙出てたちまち雨を告げはじむ

いきなり鳴きだして、「おっ!蛙だ!」と思うだけで、本当はもっと前に冬眠から起き出しているのだろう。何はともあれ、そろそろ草刈を始めなければと鎌を研いでいると、「ここに居るぞ」とばかりに大きな声がする。蛙が鳴くと雨とは言うが、当たるも八卦当たらぬも八卦、ぐらいが楽しい。ヤン坊マー坊の天気予報は終わってしまったが、こちらはいつまでも続くだろう、、、。(2013年春詠)