街中の行きつけだった散髪屋に決まって声をかける花売りの老婆があった。鏡に映る風景の中に花を満載したリヤカーを引く老婆が現れる。見ていると店の前でリヤカーを止め、表戸をちょっとだけ開けて御用聞きをする。空いている女の子が出て行って何らかの花を抱えて戻ってくる。これがいつも繰り返される鏡の中の風景だったが、この日は違っていた。リヤカーを止めると同時に老婆が店の中まで聞こえる大きなクシャミをしたのだ。それで気づいた女の子が慌てて出て行った。あとはまたいつもの風景が戻ったのだが、それだけで何だか楽しい一日になった、、、。(2003年冬詠)