小夜時雨からだ濡らして猫帰る

時雨が多い。朝起きると路面が濡れている、そんな事がしょっちゅうある。掲句は夜、出かけた猫が帰らないと思っていたらどこかで雨宿りをしていたようだ。止んだから帰ったのだろうが、草の中を通るものだから身体が濡れている、、、。(2022年冬詠)

冬霧の中トラックの眼が二つ

毎年の事ながら冬霧の深さには閉口してしまう。朝の散歩道が川沿いだから余計に深い。おまけに普段人が通る事が少ないから車のスピードが速い。霧の中から近づくヘッドライトを見ると、向こうからはこちらが見えているのだろうかと心配になる。念のため横の草むらに避けるが、ここがまた露でしっとり濡れている、、、。(2022年冬詠)

枯葎突つ切つてある獣道

しばし休憩と車を止めた山中の道路脇の駐車スペース、その先はお決まりの枯葎、入ろうとは思わないが入れそうにもない。よく見るとその枯葎の下のほうにポッカリと穴が開いたようになっている。覗くと奥のほうまでトンネルのように続いている。獣道、穴の大きさからすると狐か狸だろうか。猪や熊ではなさそう、、、。(2022年冬詠)

人間が来たぞと鴨の見張役

川に浮かぶ鴨の群、それぞれに見張り役がいるようで、他の鴨とはちょっと鳴き方が違う。いかにも「気を付けろよ」と言っているような声。移動して行くと今度は次の群の見張り役がやはり同じような鳴き方をする。これが川から離れるまで続く、、、。(2022年冬詠)

伸び放題のびて山茶花大らかに

咲き始めた山茶花を見つけたので昨年のこの句を。近所にあった空家の跡、更地になった土地になぜか一本だけ残された山茶花。「えっ!山茶花ってこんなに大きくなるのか!」と感心したぐらいに育ち、大きく伸ばした枝が花盛り、、、。(2022年冬詠)

捨墓の見ゆる葎や実南天

夏の間は墓も青々と茂った葉の奥で全く見えないが、この時期になり衰えて葉が落ちかけると次第にその姿を現すようになる。と同時にその墓に眼が行くように、その前に生えて大きく育った南天の熟れた赤い実が次第に目立つようになる、、、。(2022年冬詠)