山の中で過ごした小学生の頃に送電線の工事があった。通学路の頭上を横切る形で、V字型の谷の両側の山に鉄塔が建ち、やがて送電線が張られて行った。ちょうどその工事の時だったのだろう、学校の帰りに上を見ると、その頭上数十メートルの送電線に人の姿があった。どういう形だったかまでは覚えていないが、ドキドキしながらサーカスの空中ブランコでも見るような気持ちで眺めた。それ以後何年も、そこを通る度にまた見えるかも知れないと期待したが、結局実物を見たのはその一度っきりだった。時々テレビで同じような工事の場面を目にするが、この時のようにはドキドキしない、、、。掲句、本当は鉄塔が山より高い訳はないのだが、、、。(2009年春詠)