起されし田より始まる轍かな

そろそろ田起しが始まりました。いつもどこかでトラクターの音が聞こえているような気がします。トラクターは一枚の田が終わると次の田へ、道路へ出て大きなタイヤの溝に詰まった土を落としながら勢いよく走っていきます。しばらくはその跡がくっきりと残ります。起されたばかりの田の土の匂いは新鮮で気持ちが良いものです、、、。(2012年春詠)

包丁の痩の年月去年今年

掲句の包丁はかれこれ25年ほど前、初詣に落合の木山神社へ行き始めた頃、境内の屋台で買った、新見の松水と言う刃物屋さんのものです。以来研ぐのは私の役目、刃の欠けも何度も研いで直しました。さすがに痩せて、他の包丁に比べるとずいぶん軽く感じます。それでも手放せないのは、愛着でしょうか。刃物にはそんなところがありますね。まるで我が人生のよう、なんて、研いでいて思った時の句です、、、。(2012年新年詠)

一息に登る石段初社

明けましておめでとうございます。皆様良いお正月をお迎えでしょうか。今年一年が皆様にとって良い年でありますように、心からお祈り申し上げます。本年も昨年同様にご愛顧のほどをお願いいたします、、、。掲句、落合の木山神社での句です。まずは年の初めの体力測定、と言ったところでしょうか。この石段を登りきると「まだ大丈夫」、とホッとするのです。霊験あらたかなお勧めの神社です。是非お参りください、、、。(2012年新年詠)

ゲートボール一人球打つ晩夏かな

散歩の終点と決めている河川敷公園の端に二面のゲートボールのコートがある。以前は通る度にボールを打つ音やお年寄の歓声が響いていたが、流行がグランドゴルフに移り、急激に衰退して行った。それでも時折一人でトンボ(T字型のグランド整備用の道具)を引いている人の姿があり、今でもコートには草一本生えていない。掲句、その整備をする人と同じかどうか遠目で分からなかったが、夕方のコートで一人練習する人を見かけた時の句、、、。(2012年夏詠)

山里の雲の速さも晩夏かな

やっと梅雨が明けたと思っていたら、暦の上では夏もあと少し、残り十日となりました。晩夏です。切り立った山の谷底のような田舎の村では、日暮も早いし、日向日陰の明暗が際立ってきます。蜩が鳴き、見上げた狭い空を行く雲も、なぜか急いでいるようなのです、、、。(2012年夏詠)

一面のたんぽぽ白に黄に白に

タンポポには白と黄があって、背の高さもいろいろです。調べてみると在来種と外来種があって、外来種は黄色、在来種には白色と黄色があるようなことが書かれています。さらにそれが雑種になって、と複雑なようなのでそれ以上は調べませんでした、、、。掲句、我家の裏の土手に咲いたタンポポ、こちらは明らかに交配が進んでいるようです、、、。(2012年春詠)

犬ふぐり一つが千にたちまちに

もう芽が出ていると思っていたらいつの間にか咲いているのが犬ふぐりですね。それも気づいた時には必ず周囲に広がっています。一度でいいから誰よりも早く、最初の一つを見つけたいものです、、、。(2012年春詠)