ははは、こんな事もありました。出張先での句。どちらへ行ったでしょう。正解は「寄道をして海を眺めてから会社へ行った」です、、、。(2012年春詠)
カテゴリー: 2012
小股にて下る急坂春時雨
怪しくなってきたなあ、と思っていたら急に降ってきた。あわてて吟行を切り上げて公園の坂を下る。舗装のない坂道は何となくすべりそうで自然と小股になってしまう。全員同じような足取りで坂道を下った。その足取りばかりが記憶にあって、傘を持っていたかどうか、そこの所が記憶にない。早島公園での句、、、。(2012年春詠)
金毘羅往来猛犬注意梅の花
早島を歩くと「金毘羅往来」の文字、由来を読むと江戸時代に香川の金毘羅さんへのお参りに使われた道とのことだった。往時を偲びながら歩いていると、昔ながらの立派な門と塀に囲われた古い屋敷に行き当たった。高い塀越しに梅の花が見える。門の木戸は閉じられ、横の通用口の所に「猛犬注意」と書かれた白いプラスチック製の板が貼られていた、、、。(2012年春詠)
遠汽笛春の音とも叫びとも
電車もディーゼル車もひっくるめて汽車と言ってしまう。一両だけでも列車だし、警笛ではなく汽笛と言ってしまう。ということで掲句、実際は警笛です、、、。(2012年春詠)
中州へと渡るすべなしきぎす鳴く
川は毎年少しずつ流れを変える。近くの吉井川も十何年か前の大水の時に、リセットされたように一度きれいになったが、その時に出来た細い流れが今では飛び越せない幅になり、淵まで形成して水鳥たちの格好の遊び場になっている。その向うに広がった中州は大きな柳の木までが成長し、ちょっとしたジャングルのようになり、四季折々の鳥の声が聞こえてくる。この頃は雉の声が、そろそろ恋の季節なのだろう、時折間の抜けたように聞こえてくる、、、。(2012年春詠)
春泥の乾きて車庫のトラクター
古くもなく新しくもない、と言った風情の住宅街だった。少なくとも見える限り通の両側は庭付きの普通の民家で埋まっており、農家らしい家など見当たらなかった。そんな中の通に面したシャッターの上がった車庫を覗くと、車ではなく大きなトラクターが入っていた。農家らしくない佇まいの家の車庫の中でトラクターは、「どうだ」と言わんばかりに、外車なみの存在感を見せていた。大きなタイヤには土が乾いていたが、、、。(2012年春詠)
春雪の川に一羽の立ん坊
いやあ降った降った、昨日(2月8日)は久しぶりの大雪でした。ヘッダーの写真も昨日の物に替えてみました。春の雪は明るくて良い、なんて言えるのは降っても被害のない所だからでしょう。一年の半分が雪の中のような所で生活されている方々にすれば、何を馬鹿な事を!と叱られるでしょうね、、、。掲句の立ん坊は川鵜です。降りしきる雪の中で、吉井川の中ほどに覗いた岩の上に、たった一羽で川鵜が突っ立っていました。いかにも寒そう、と思うのは人間だけなのでしょうか、、、。(2012年春詠)
節分や吹きつさらしの刃物砥
今週はまた真冬の寒さが戻ってくるとかで、そう簡単には春はやって来ないようだ。掲句の年の節分は寒風吹きすさぶ寒い日だった。近くのショッピングセンターの前にテントを張り、いつもの刃物砥が来ていた。包丁、鎌、農具等々、所狭しと並べられた商品の奥にグラインダーを置いて、年老いた男が包丁を砥いでいる姿はいかにも寒そうだった、、、。中学生の頃だったか、大きな自転車の後に砥石やもろもろの道具を載せて家々を回る刃物砥を何度か見たことがある。やはり(中学生の目から見ればかも知れないが)老人で、自転車のハンドルには足に紐を付けたペットのカラスを止まらせていた。なぜかその刃物砥とカラスの組み合わせが、絶妙に感じられたものだった、、、。(2012年冬詠)
時雨るるや茶店に紅き小座布団
衆楽園の中に小さな茶店がある。開いていたり閉まっていたり、しばらく続けて閉まっていると思っていたら、ある時通ると店の女主人が替わっていた。だいぶ若返っていた。以後はずっと開いているのかと思ったがそうでもなさそう、、、。この時は時雨の来るような寒い日で、表のガラス戸は閉まっていたが、軒下の縁台にはお決まりの赤い小さな座布団が並べられ客を待っていた、、、。(2012年冬詠)
すつぽりと村を収めて冬の虹
さあーっと強い時雨が襲ってきた。近くにあったお堂の軒下を借りて雨宿り、待つほどでもなく雨は過ぎて行った。さあ帰ろうかと外に出ると虹が出ていた。珍しく両端から頂まで弧を描いているのが見える大きな虹だった。その下を時雨が日を受けながら去って行った、、、。(2012年冬詠)