ザックリと刃の音やはし春キャベツ

プールで泳いだ後にジャグジーに浸かりながら盗み聞きしたおしゃべり三人組の話では、春キャベツは玉になり難いらしい。だから「巻かなくても少し伸びたら採って使うんで」と言っていた。そういえば我家の三本のキャベツも葉っぱばかり大きくなって、いまだに玉にならない。今ここから覗いてみると、大きな葉っぱの上に今朝の雨が玉になって光っている。まあいいか、青虫の餌ぐらいにはなるだろう、、、。(2012年春詠)

けむり立つ城の裏側花は葉に

花時の終わったお城山を裏側から見上げると、ごみを焼いているのだろう、そびえる石崖の上に煙がひとすじ上がっていた。石崖の縁に見えていた雪洞は既に無く、桜の木は花から葉へと一斉に色を変えつつあるのだった、、、。(2012年春詠)

塀越しに見ゆる家紋や桃の花

古い街道脇の立派な土塀の上に桃の花が鮮やかな色を見せている。古そうな家だなと思いながら、塀の上から覗いてみると、玄関の長押のところに大きな家紋が見えた。玄関の家紋はそれまでに見たことの無い光景だったが、土塀、桃の花、家紋の取り合わせがいかにも日本的で印象に残った、、、。(2012年春詠)

川渡る風に道ありつばくらめ

鶴山公園の東を流れる宮川は両岸に遊歩道が整備されており、昼間は少ないですが時々散歩している人を見かけます。上手に稲荷橋、下手に大橋の二つの橋がありますが、面白いことにその中ほどの川の中に飛び石が配置されているのです。水が出れば渡れませんが、そうでなければ、昔に戻ってちょっとスリリングな気分が味わえますよ、、、。掲句はその宮川の上を飛ぶ燕、見ていると何度も同じコースを通っている。きっと空にも飛びやすい所があるのだろう。風が心地よい、、、。(2012年春詠)

天の日を受くる形に紫木蓮

暖かくなったと思ったら、途端にあれもこれもと咲き出し、気が付けばもう木蓮の季節になっている。白木蓮も好きだが、紫木蓮の微妙なグラデーションも良い。咲く前の莟は、いかにも「お願い、もっと光を!」と言うふうな形に見えるが、咲ききってしまえば、「もう満腹、疲れましたあ~」とばかりに頽れてしまう、、、。(2012年春詠)

仕残して定年退職花菜風

河原から菜の花の種を採ってきて、自宅裏の土手に蒔いておいたら、数年で土手一面を覆うようになってしまった。まさに一面の菜の花で、しばらくは鮮やかな黄色とむせるような香りにつつまれた日々となる。その後はどうなるか、と言うと菜の花は咲きながら成長し、種が熟れる頃には持て余す大きさになってしまう。強い、、、。(2012年春詠)