茶の花や空家となれば人訪はず

久し振りに道を変えて歩いてみた。途中にある古いお家、かつては小柄な上品そうなお婆さんが一人で住まわれていた。生垣の間に何本か茶の木が植えてあり、冬になると隠れるようにして白い花が咲くのだった。亡くなられたと聞いたのはもう一年以上前になる。それから空家となっているのだろう、門の内の小さな庭には草が伸びている。生垣も、何だか知らない蔓性の植物が絡まっている。確か茶の花が、と思って見ると、あった!生垣の奔放に育つ他の木の間で、身を細めるようにしている茶の木に、以前と同じように隠れるように白い花が、数個、、、。(2018年冬詠)

庭掃いて落葉に混じる鳥の羽根

立冬です。数日前から凩らしき風もあり、我が家の庭は落葉だらけです。しばらくは落葉掃きが日課となります。そんな落葉の中に時々鳥の羽根が混じっています。自然に抜けたものなら良いのですが、、、。(2018年冬詠)

雨風の過ぎて朝の石蕗の花

冬に分類される花だが毎年この時季になると咲き始める。石蕗が咲くと冬が近い事を感じ、衰えていく野の中に光るように咲くその花に、なんだか心が温まるような気がする。今日は霜降、冬近し、、、。(2018年秋詠)

逆立ちの鯉の屍寒の川

水量の減った川の底に何やら見慣れないものが見える。近寄ってみると頭を下にした大きな鯉、一向に動く気配はない。よく見ると多少色も変わりかけているようで、死んで数日と言ったところだろうか。寒さに耐えられなかった老鯉か。それにしてもどうして逆立ちなんだろう?と想像を膨らませた寒かった昨年の句、、、。(2017年冬詠)

寒林の波音近き室戸岬

もう七年が経ってしまった。二か月を四国徳島で過ごした退職前、一日休みを取って室戸岬まで足を延ばした。海岸から最御崎寺まで遍路道を登ってみた。車にすれば良かったと何度も後悔したが、時折眼下に見える太平洋の白波と波音に励まされるようにして登った。毎年この時期になればこの四国での二か月を思い出すが、その記憶は年々薄くなって行くような気がする。良くも悪くも、最後の二か月だった、、、。(2017年冬詠)