黒犬の背に留まりて雪となる

夕刻の散歩で久しぶりに出会った人、会えば犬に声をかけてくれる。「やあ、だいぶ歳を取ったなあ」と尾を振る犬を撫でて、「がんばれよ!」と言い残して去って行った。半年ほど前になるだろうか、人づてにその人が重い病気で岡山の病院に入院されていると聞いていたので、正直出会って驚いたのだが、犬にかけた「がんばれよ!」の一言が、私にはご自分に対する覚悟の言葉のように聞えて、しばらくその後姿を見送った。「がんばってくださいよ!」、、、。(2013年冬詠)

凍雲やクレーンの腕の伸びしまま

夏の終わりごろに散歩の途中で遠くの山に何やら光るものを見つけた。あんな所に何だろうと思ったが、思い当たるものは無くそのまま忘れていた。それが秋の終わりごろから、その光っていた辺りに大きなクレーンが何基か見えるようになった。よくよく考えてみると、新しいゴミ処理施設らしい。そう言えばいつだったか、その施設に関する環境アセスメントの書類が来ていたが、地図で見てもずいぶん離れているし、我家には関係ないだろうとほとんど読まなかった。が、地図で見ると遠くても、間に何もないと意外と近いものなんだなあ、、、。(2013年冬詠)

どん兵衛のどんぶり流れ十二月

ネット句会へ出しましたが、流石に点は入りませんでした。ご存知カップ麺どん兵衛の丼です。ひと目でそれと分かりました。上手く水に乗れば流れるものですね、大川の中央をどんぶらこどんぶらこ、、、。(2013年冬詠)

機関区を覗けば午後の冬日向

機関区には広い敷地に何本もの線路が走っている部分と、整備に使う背の高い古びた大きな建物がある。建物の中にも線路があり、その一つが塀際まで飛び出した形で、そこに大きな扉がある。夏の間はそこを開けて作業をされていることが多いが、冬は閉ざされていることのほうが多い。たまたま開いていたので覗くと、明かり取りの窓から入った午後の日差がちょうどスポットライトのように線路の部分に当たっていた、、、。(2012年冬詠)

図書館の窓広々と遠雪嶺

先週の寒波でとうとう山が白く見えるようになりました。掲句は昨年の冬、津山市図書館からの景。ビルの4階にある図書館の北側の広い窓からは遠くの山並が見えます。普段はどうってことないのですが、雪が降るとなんだか急に山が近づいて見えるのは不思議です、、、。(2013年冬詠)

木枯やビルの狭間の定食屋

通りには並木があり、大きなビルが連なっている。そんな中の隙間のようなところに残った小さな定食屋、昔ながらの色あせた白い暖簾が木枯になびいていた。入口の左に、これも色あせたメニューのサンプルケース。どちらも褪せてはいるがきれいに手入が行き届いてをり、ちょっと入ってみたくなった。が、昼食には少し早い時刻、句だけ書きとめ再び木枯の中へ、、、。(2013年冬詠)

冬日向犬と良く似た老人と

自分のことではありません。句会への途中、岡山西川緑道公園での句。緑道公園では時々こういうほのぼのとした方に出会う。それは時には犬と老人であったり、またある時は老夫婦であったりするのです、、、。(2013年冬詠)