路地細し凍雲空を埋め尽くし

おや、こんな所に路地が、と店と店の間の細い路地に入ってみる。人一人がやっと通れる程度。すれ違いは出来そうにない。その路地の向こうには横切る人影が見えるから行きどまりではないらしい。上を見るとどの家も二階建てで、その上の空も同じく細い。寒そうな雲が埋め尽くしている、、、。(2019年冬詠)

凍雲や太古海てふ街の空

私の実家は山の中ですが、実は太古の昔は海だったのです。それが証拠に近くの山の上には丸い小石を含んだ岩がたくさんあります。貝の化石が出るのもその証拠ですね。掲句は倉敷阿智神社から街並を眺めて詠んだ句です。昔海と言ったって我が田舎に比べれば若い若い、なんて強がったりして、、、。(2015年冬詠)

凍雲やクレーンの腕の伸びしまま

夏の終わりごろに散歩の途中で遠くの山に何やら光るものを見つけた。あんな所に何だろうと思ったが、思い当たるものは無くそのまま忘れていた。それが秋の終わりごろから、その光っていた辺りに大きなクレーンが何基か見えるようになった。よくよく考えてみると、新しいゴミ処理施設らしい。そう言えばいつだったか、その施設に関する環境アセスメントの書類が来ていたが、地図で見てもずいぶん離れているし、我家には関係ないだろうとほとんど読まなかった。が、地図で見ると遠くても、間に何もないと意外と近いものなんだなあ、、、。(2013年冬詠)

凍雲や直線で切るビルの空

歩きなれた良く知った街は下を向いて歩くことが多い。よく知らない街は上を見て歩くことが多い。中途半端だと、上を見て歩きながら他の事を考えていたりする。掲句は岡山駅西口から句会場へ行く途中で出来た句です。合歓の会へ参加した年で、周辺を何回か歩いたぐらいの中途半端な頃だったなあ。(2008年冬詠)