重さうな空をささへて栗の花

大きな栗の木の全体を覆うように白い花が咲いている。その上に深く曇った重そうな空がある。まるで大きな栗の木が空全体を「ヨッコラショ」と支えているように見える。梅雨の空はいかにも重そう、、、。(2014年夏詠)

夏帽子目深にプール監視員

プールは設備点検のため一週間のお休み。ちょっと運動不足。休みが終わると屋外のプールも始まる。そうすれば子供たちは屋外に流れ、休日も屋内が泳ぎやすくなる。掲句はもう少し後、夏休みに入った頃の句。監視員も大変だ、、、。(2014年夏詠)

花南瓜ふれて帰りし犬匂ふ

一昨年は、裏の土手にたまたま生えた南瓜が、知らない間に大きく育って実をつけた。それに味を占めて昨年はホームセンターで苗を買って来て植えたら、これがまた大きく育って、食べきれないほど採れた。じゃあ今年も、と苗を買って植えたのだが、どうも今年は育ちが悪い。まだ葉っぱが鴉瓜の葉ぐらいの大きさ。その代わり庭に出てきた芽を、メロンかなあ?なんて考えながら大事にしていたら、どんどん葉っぱが大きくなって、これは明らかに南瓜、、、。(2014年夏詠)

大方はなめくぢの物光る跡

掲句は本山寺での句ですが、ナメクジは我家の庭にも出て困ります。せっかく植えたピーマンの苗を夜毎食べに来るのです。農薬を使うのは嫌だし、ビールの残りで誘引するとか、夜に懐中電灯を持って箸でつまんで塩水に入れる方法もありますが、なんだか効率が悪そう。そんなことを調べているうちに、ナメクジは銅のイオンを嫌うらしいことが書いてありました。オッ、これだ!と、早速銅線を貰ってきて、ピーマンの根っこの周囲に二重に回しておきました。いかにも効果がありそうなピカピカの銅線です。さて、結果はいかに、、、。(2014年夏詠)

本尊の円空仏似梅雨灯す

実物の円空仏は滋賀県大津の三井寺で見ました。四体か五体、一様に優しい顔をした小さな仏様でした。知識が無ければ下手くそな出来損ないの彫刻としか見えなかったかも知れませんが、さいわい少しはありましたので、これが円空仏かと感激しました。掲句は本山寺のご本尊、もちろん大きさも御顔も異なり、円空仏ではありませんが素朴な優しさがありました、、、。(2014年夏詠)

本堂の開け放たれて黴にほふ

本山寺でお坊さんに遇ったことはありません。遇うのはいつも掃除をされている年配の方と数年前から見かけるようになった作務衣姿の若い方。修行僧ではなくて、寺男として働いておられるよう(寺男の修行?)に見えます。この日は珍しく本堂の表が大きく開かれ、二人は本堂の中に、掃除機の音も本堂からのものでした。こんな機会は滅多にない、せっかくだから中を見せて頂くことに、、、。(2014年夏詠)

近づくと見せて遠くへ時鳥

これも本山寺での句です。この時季の鳥は何と言ってもホトトギスです。木から木へ移っては鳴き、移っては鳴き、なかなか近くへは来ませんが、それでもじっと待っていると時には頭上を越えていく姿が見えることも、、、。(2014年夏詠)