目の前を発ちてきぎすの眼の紅し

今になって考えてみれば、紅かったのは眼ではなく顔で、その中にギョロリとした眼が見えたはずです。なのに、なぜかこの瞬間には眼が紅いと思ったのです。急な羽音で頭の中の回路が誤動作したみたいです、、、。(2022年春詠)

春眠や始発その次過ぎてなほ

と言いたいところですが最近また早く目が覚めるようになって、困ったものです。時間的に見ると朝刊の配達される頃で、たいていが同じ時間帯です。しばらく目覚める事が無くて、もしかしたら配達の車がEVになったのかもと思っていたのです。それで今度は、もしかしたら配達の方が変わったのかもと思っています、、、。(2022年春詠)

春の雪ごま塩ほどが石の上

今年は雪が多い年でした。ここ何年もほとんど積もった記憶が無く、このぶんだと冬用タイヤはもう要らないかと思っていましたが、いやいや、雪は忘れた頃にやって来るものです。捨てられません。掲句は昨年、これぐらいなら可愛いものです、、、。(2022年春詠)

薄氷の気づけば消えて行くところ

寒い間は結構気にして確かめていた甕の氷、いつの間にか忘れてしまっています。そんなある日、ふと見た甕の水に氷、それもほとんど消えかけて、まるで解けかけたオブラートのような状態、、、。(2022年春詠)

浅春や季節も試歩も一歩ずつ

杖を頼りにゆっくりと歩かれている近所の方がありました。そう言えば何やら手術をされるとか、されたとか、人づてに聞いたような記憶があります。ガンバレと声を掛けたいところですが掛けません、、、。あれから一年、久しぶりに見かけたら、歩きはゆっくりながら杖はなくなっていました、、、。(2022年春詠)

水音の覗けば速し春の川

春の日差に誘われて足を延ばした散歩道でのこと、橋でもないのに下から水音が聞こえます。道は川に沿っていますが、反対側に川は見当たりません。なんでだろうと思って道路の川側を覗いて見ると、下のほうに大きな暗渠の出口が口を開けています。なるほどこの音かと納得できましたが、それにしても反対側に全く存在が分からない暗渠も珍しい。暗渠の入口はどこだろう、と好奇心が、、、。(2022年春詠)

残雪の山より高きテレビ塔

遠くの山の上に立つテレビ塔も高圧送電線の鉄塔もよく見えます。もちろん眼鏡をかけての話です。と思っていたら、昨年の暮あたりから右目に変なものまで見えるようになりました。飛蚊症です。加齢によるものなので付き合っていくより他はないらしいです。だいぶ慣れたけれど、やっぱり邪魔です、、、。(2022年春詠)