木枯の体操の楽載せて来る

散歩コースから北西の方角、午前八時三十分、思い当たるところが無いのですが、風に流されて遠くから小さな音で聞えてきます。スピーカーでラジオ体操の音楽を流すぐらいだからきっと大きな工場なのだろう、どんな仕事をしているのかな、と想像するのも楽しい、、、。(2018年冬詠)

木枯やビルの狭間の定食屋

通りには並木があり、大きなビルが連なっている。そんな中の隙間のようなところに残った小さな定食屋、昔ながらの色あせた白い暖簾が木枯になびいていた。入口の左に、これも色あせたメニューのサンプルケース。どちらも褪せてはいるがきれいに手入が行き届いてをり、ちょっと入ってみたくなった。が、昼食には少し早い時刻、句だけ書きとめ再び木枯の中へ、、、。(2013年冬詠)

木枯や旗竿打てる旗の紐

会社員時代、風の強い日には隣の工場の旗竿の音がよく響いていた。金属製のポールはカンカンと乾いた大きな音がする。そこにはポールが三本あり、社旗、国旗、安全旗が毎日揚がっていた。雨の日はどうだった?と、ふと考えたが記憶にない、、、。掲句は通りがかりに聴いた別の旗竿の音、旗は揚がっていなかったがよく響いていた、、、。(2013年冬詠)

木枯や無住寺閉ざす五寸釘

「人数が足りないみたいで安く蟹を食べに行ける」と言うので、急遽広島県の山奥の温泉へバスツアーに行ったことがあります。急に行ったことを理由にしますが、その温泉の名前が思い出せない、、、。川沿いのひなびた温泉で、川に向かって見晴らしの良い露天風呂がありました。少し歩いたところに橋があり、橋を渡ったところからお地蔵さんがならぶ坂道が続き、上りきったところにお寺がありました。普段は誰も居ないお寺なのでしょう、建物の扉はいかにも「入るべからず」と言うように、大きな釘が打たれていました。(2001年冬詠)