川に犬入れて見てゐる薄暑かな

ラブラドールレトリーバーはどの犬も水が好きなのかと思ったがそうでもないらしい。近くの表具屋さんのところのラブラドールは、「水は苦手だけど走るのは大好き」と、いつも自転車と一緒に走り回っている。だからかどうか、うちの愛犬「もみじ」よりずいぶんスマート。うちの「もみじ」は真冬でも水に入りたがるぐらいに水が好きだが、「いくらなんでも後の手入れが」と、こちらの都合で禁止、五月から解禁となる。で、土手から少し降りた川の中に首まで浸かり、上目づかいにこちらを見ているのだが、この時季になると、それを見ているこちらの額には汗が滲んでくる、、、。(2013年夏詠)

人なくて薄暑の広場ただありぬ

宇野港での句。瀬戸大橋が出来るまではフェリー待ちの多くの車で賑わっていたのだろう。しかし今はその面影は無く、駅前から埠頭へかけて空地が広がっている、、、。高速道路も瀬戸大橋も無かった時代にも何度か車で徳島まで出張したが、津山から片道6時間ぐらいかかっていた。だから宇野から高松へのフェリーでの1時間が貴重な休憩時間になっていた。おまけに運転が下手ということになっていた私がハンドルを任される心配はなかったので、私はこの時とばかりにしっかりと船旅を堪能出来たのである、、、。(2013年夏詠)

紐引いて犬すれ違ふ夕薄暑

犬と散歩をするようになってずい分になります。今は黒い大きなラブラドールですが、最初は白の小さいプードルでした。プードルは小さいのに気が強く、自分より大きな犬にも構わず吠えました。恥ずかしいぐらい吠えるので、いつもリードを引いてそそくさとすれ違っていました。ラブラドールは静かで、生まれてこの方数えるほどしか吠えたことがありません。もちろん他所の犬とすれ違っても同じです。だから飼主としては得意で、申し訳無さそうにしている人ににこやかに挨拶をして、ゆっくりと通り過ぎるのです、、、。(2003年夏詠)

人波に残され一人街薄暑

京都での結婚式の後大津で一泊、三井寺と義仲寺を歩きました。その時の句を書きますので、しばらくお付き合いください。<その1>姉夫婦が同じ三条から電車に乗ると言うので、「じゃあ連れてってよ」と後にくっついて式場を出ました。姉は昔京都に居たので道に詳しく、今も大阪暮らしで雑踏にも強いのです。私は田舎道を歩くのには慣れていますが、雑踏には弱い。それにお酒も少々、、、。おのずと結果は見えていて、「これが河原町通りで、こっちに行くと・・・」と説明してくれる姉の言葉は上の空で、二人の後姿を見失わないようにするのが精一杯なのでした。五月の暑い日の夕暮れでした。(2012年夏詠)