今年も押詰って来ました。作楽神社に行くと、迎春準備にせわしない人間を尻目に、木の上では鵯が賑やかにおしゃべりを楽しんでいます。早いものですね、皆様良い年をお迎えください、、、。(2011年冬詠)
足見えぬほどに膨れて寒雀
近所にある道沿いのお宅、家の前の菜園の隅に植えられたピラカンサスが大きくなって、赤い実をたわわに付けている。なぜかそこに毎日雀がたくさんとまっている。実を食べているわけではない。おしゃべりは多少聞こえるが、ほとんどが同じ方向を向いて整然ととまっている。少し坂になった道とピラカンサスの間には用水が流れている。だから安全と知っているのか、私と犬が通っても平気でこちらを観察している。ふさふさの羽毛が温そうだ、、、。(2010年冬詠)
冬の子の真一文字に口紅し
句稿に残っていた句だが、さてどういうシチュエーションで詠んだ句だったろうか?今から十一年前だから、うちの子では無さそう、、、。(2002年冬詠)
冬木立賢治自筆の農日誌
宮沢賢治の詩「永訣の朝」にある(あめゆじゅとてちてけんじゃ)がなぜか好きで、この一節だけを覚えています。死に瀕した妹とし子が賢治に「雨雪をとってきて」と頼む岩手地方の方言のようです。実際にはどのように発音するのかわかりませんが、何となく兄と妹の心のつながりが感じられる一節で好きです、、、。(2002年冬詠)
一本の矛立つごとしポポ枯るる
何度か登場したポポの木、大きな葉が黄葉し寒さに耐えていたが、霜が降りるようになるとあっという間に葉を落してしまう。まだ剪定をしていなかったこの年のポポの木は、葉が落ちると見事にすっきりとした形の立ち姿を現した。真ん中に真っ直ぐな幹、同じ高さの位置から対象に出た同じように天に向って伸びる枝、まるで矛のようだと思った。この年には大きくなり過ぎないように途中で切ったが、今度は切ったところから出た枝に対象に枝が付き、翌年には矛を傾けたような形の枝が出来た。木は柔らかく素直、朴の木を切るようだ、、、。(2010年冬詠)
熱燗やこのごろ慣れし厨事
熱燗の兼題で作ったこんな句が残っていました。もっとも、今更慣れたなんて言わなくても、昔からの事です、、、。熱燗もいいなあ、、、。(2002年冬詠)
コート脱ぐいざ出陣の納句座
明日は今年の納め句会、さてどうなることやら、、、。(2012年冬詠)
凍雲やくの字に曲がる鳩の群
岡山の西川緑道公園や岡山駅の桃太郎の銅像周辺にいる鳩、散歩の途中の冬空を群れて勢いよく飛んでいる鳩、どちらも同じ鳩なのだが、、、。(2000年冬詠)
地震後の窓に静けき冬の月
鳥取県西部地震があったのがこの年(2000年)の秋だから、それより後の地震に敏感になっていた頃にあった小さな地震だったのだろう、目覚めると窓のちょうど見える位置に冬の月があった、、、。鳥取県西部地震があったのは、出張中の大阪の本社での会議中だった。相当揺れた。会議が終って部屋に戻ると「震源は鳥取らしいで、帰れんのとちゃうか」、慌てて電話を入れたが被害はなかったとの事だった。が、これを理由に早々に切り上げて帰途についた。高速道路はいつもより空いている感じがしたが、被災地へ向う自衛隊や放送局の取材用の車が何台も走っていた、、、。(2000年冬詠)
暮早し眉月高く光り初め
冬至。日の暮れがもっとも早いのは冬至よりも十日ほど前のようだ。掲句はそんな早い日暮れの頃、見上げた空に眉月が次第にその光を増し、存在を明らかにしていくのだった。ちなみに今年の今日は旧暦11月20日だから、月は既に満月を過ぎ、痩せ始めて朝の西空に残っている頃だ、、、。(2010年冬詠)