威銃鳴りつつ雀太りつつ

「威銃ゥ、あんな物ぁ怖いこたぁありゃあせんで、ちょっと飛び上がって見せるだけじゃが」「せえでもなあ、ちいたあ効果がねえと、農家の人に気の毒じゃからなあ」とでも言いたげな雀の群が、威銃から少し離れた田圃に群れて姦しい、、、。(2014年秋詠)

行合の空や秋雲控へめに

行合の空なんて洒落た言い方があるものですね。季節が移り変わる中間点の空を行合の空と言いますが、ことにそれらしいのは夏から秋へ移る頃の空ではないでしょうか。まだまだ暑い空には積乱雲が勇姿を見せていますが、その空の端っこのほうで申し訳なさそうに秋の雲が流れて行きます。何となくその間に感じられる区切りが前線でしょうか。やがて立場は逆転して、積乱雲が隅っこのほうに見られるようになるのですが、もう少しですね、、、。(2014年秋詠)

晩夏今顔にシャワーを痛いほど

なんだかんだ言っているうちに今日で夏も終わりです、、、。プールのシャワールームに、開放された屋外プールのほうから、ス~ッと風が入ってくるのがこの頃です。何とも涼しい晩夏を感じる風です。川で泳いでいた子供の頃に、ちょっと遅くなって日暮れが近くなった時に感じていたのと同じ風です、、、。(2014年夏詠)

夕日濃し赤きトマトの透けるほど

ダム湖の展望台で、足元のはるか下に見える湖面を見ながら句作をしていたら、後からお年よりに声をかけられた。「ちょっとお話させてください」「はい」と返事をすると、自分がその近くで生まれ育ったこと、16歳で近くの発電所に就職したらすぐに広島に行かされ、爆心地から1.6kmの所で被爆したこと、その後材木商の仕事をして、このダム建設に携わったこと、いろいろ在ったがここに来て山を見ると生きていて良かったと思うこと、を、一気に話された。最後に「私はもう年寄ですが、見ればあなたはまだお若い。人生はこれからです。しっかりがんばってくださいよ。お邪魔しました」と言い残し、シルバーマークを二つも付けた軽自動車で帰って行かれた、、、。その時はその方が被爆者で、初めて被爆体験を直接お聞きしたことで頭がいっぱいでしたが、後で考えると、これって俳句仲間から時々聞く、例の勘違いだったのかも知れない、、、。今日は原爆忌、七十年の平和をもう一度考えてみたい。黙祷、、、。(2014年夏詠)

潦きりきり回る水澄

雨の後に出来た河原の水溜りに、どういう訳かアメンボやミズスマシが居ることがあります。どちらも昆虫で羽根があるから、そういう意味では不思議は無いのですが、でもすぐに消えてしまう水溜りに、どういう理由でやって来るのか、そういう意味ではずいぶん不思議な気がします、、、。こんな事を考えるのは、ようするに暇なんです、、、。(2014年夏詠)

用水の音に落着秋近し

早い田圃ではもう稲穂が見られます。それに従って用水の水量が少し減って来ました。庭の水遣りに便利に用水の水を使っている我家としては、勢いよく流れているほうがありがたいのですが、こればかりは優先権があるのは農家の方ですからね、、、。(2014年夏詠)