ゴルファーの一枚脱いで春隣

散歩に行く吉井川の河川敷の公園でゴルフをする人がいます。河川敷の公園でゴルフをして良い訳が無いし、こちらもそれなりの年配になったし、おまけに見た目の怖そうな大きな黒い犬まで連れているので、平気で図々しくゆっくりと間を通って行きます。さすがに通り過ぎるまでに構わずに打ってくるようなゴルファーはいませんが、ゴルフならゴルフ場へ行けと言いたくなります。そうそう、こういう時はわざと帰りも同じコースを歩きます(笑)、、、。(2013年冬詠)

寒林の樵無口なやさ男

滅多に買うものじゃあない洗濯機を十七年ぶりに買いました。たかが洗濯機と思って買った十七年前に、それまでのグルグル回るだけと思っていた動きが変わっているのに驚いた記憶があります。だから今回もそれが楽しみで、上部の窓から眺めていたのですが、面白いですね。実に複雑な細かい動きをしていて、見ていて飽きないのです。しかし、老年の男がじっと洗濯機を覗いている図なんて、あまり見られたものではありませんね、、、。(2013年冬詠)

枝先に一羽武蔵の冬の鵙

宮本武蔵が描いた水墨画に「枯木鳴鵙図」と言う枯木にとまった鵙の画があります(ネットでも宮本武蔵 鵙で検索すれば出てきます)。掲句は散歩の途中でちょうどあの図のような構図を見た時の句です。実際に見た鵙の顔は、武蔵の画ほどの厳しさはありませんでしたが、それでも十分に猛禽類の顔でした、、、。ここからは雑学です。枯木鳴鵙図の鵙は右向きに描かれています。これは武蔵が左利きだった証拠で、右利きだったらたぶん左向きに描いていただろうとのことです、、、。(2013年冬詠)

地に還るものを眠らせ大枯野

二週間ほど前になりますが甥の結婚式で久しぶりに大阪へ行きました。翌日高速バスの待合室で時間をつぶしていると、道路の向こう側の歩道を散歩する黒ラブの姿が見えました。離れていたので犬が黒ラブであること、連れているのが私と同年輩の男性であることぐらいしか分かりませんでしたが、いつものコースなのでしょう、どちらも慣れた足取りで通り過ぎて行きました。まるで我家と同じだと思ったのですが、ふと歩くところがまるっきり違うことに気づきました、、、。(2013年冬詠)

寒雀パンのかけらを確かむる

散歩の途中の土手の舗装路に雀が降りてきた。見るとパンの耳らしき物を銜えている。初めて貰った物か、一端路上に置いて首をかしげながらつついてみている。近づくと銜えて数メートル先まで飛んでいき、また同じことをしている。それを二三回繰り返すと、やっと私が行く方向に逃げていることに気づいたのか、道から外れて田んぼのほうへ飛んでいった、、、。(2013年冬詠)

空すべる模型飛行機冬ぬくし

散歩コースにある河川敷のグランドは電線がないので模型飛行機を飛ばすにはちょうど良いようだ。昨年の冬に見た掲句の模型飛行機はエンジン付のグライダーで、静かに晴れた冬空を滑っていた。天気が良かったので犬と一緒にしばらく見ていたら降りてきた。主翼が2メートルほどもある大きな飛行機で、操縦席にはちゃんと小さなパイロットの人形が座っていた。操縦していた30代後半と思える男性に聞くと、燃料はバッテリーで1回の充電で40分ぐらいは飛べるらしい。道理で静かなはずだ。「今日は暖かくていいね」と言うと「いやあ、じっとして操縦していると結構寒くて」と言いながらも、顔は十分満足そうだった、、、。(2013年冬詠)

寒風にうどん屋の出汁にほひけり

寒風の中で幟の「うどん」の字が千切れそうに揺れていた。その風に乗って「蕎麦もいいけどうどんもなあ」と思わせるような出汁の良い匂いがしてきた。ここは主人の腕の見せ所、「そば屋なんぞに負けてたまるか」と思ったかどうか、とにかく食欲をそそられる匂ではあった。明日はうどん屋の負けは明白、、、。(2013年冬詠)