釣舟の眠るが如し冬の湖

旭川ダムのダム湖にはいつも数艘の釣舟が浮いている。遠目で見るので詳しくは分からないが、小さな木製の舟の上に合板で作った窓のある箱を乗っけたような形をしている。いつ見ても人の姿は見えないが、通りがかる度に場所が変っているからまんざら動かない訳でもなさそうだ。何を釣るのだろう、きっとあの箱の中は暖かくしてあるのだろうなあ、、、。(2014年冬詠)

枇杷の花朝日当たれば明るくて

枇杷はこの寒い時期に白い小さな花を房状に沢山つける。決して派手ではなく、ひっそりと長期間咲き続けている。そんな花だが朝日が当たるときだけは、角度にもよるのだろう花の白さが際立って輝いて見える。きっと長期間咲くからこの時季に咲いても受粉出来るのだろう、、、。去年から咲き始めた我が家の枇杷、たくさん実がなったのでそのままにして楽しみにしていたら、見事に虫にやられてしまった。それに一つの房に沢山生り過ぎて粒が小さかった。来年は間引きや袋かけに挑戦してみようと思っている、、、。(2014年冬詠)

映る雲ほども動かず浮寝鳥

風が強く雲が勢いよく流れている冬の日でした。広い川の中ほどに数羽の鴨が浮いていました。首を折り、まさしく浮寝の姿勢です。よく見ると、川も流れている、その川に映っている雲も動いているのに、浮寝の鴨だけが動いていないのでした。きっと、寝ているようで寝ていないのでしょうね、水面下では無意識に足が動いているのでしょう、、、。(2014年冬詠)

挨拶に大根二本を抜き呉れし

近所の方で、年齢は私よりだいぶ上だが現役の某会社の社長さん。平日は口元を引き締めて車で出勤される姿を時々見かける。休日はまるで違う一人の老人の顔で、散歩をしたり野菜作りをされたりしている。話をすると町内の長老と言った感じで話されるので、当たらず触らずの対応をすることにしている。休日の朝、野菜作りをされているところへ通りかかり、挨拶をするといきなり「大根はいらんか?」という話になり、大きなところを二本抜いてくださった。もっともその後に、町内会の役員うんぬんの話があって、どうもこちらのほうが狙いだったような気もする、、、。(2014年冬詠)

トラックの屋根に積み来る雪便り

県境のほうから南下してくる大きなトラックがカーブを曲がるときに屋根の雪を振り落として行く。それも思わぬ早い時期に。行き過ぎたトラックを振り返ると屋根にはまだたっぷりと雪を積んでいる。通りがかるカーブごとに落して行くのだろう、雪便りを配達するように、、、。(2014年冬詠)

寒林の疎にして夕日透けにけり

冬のこの時期はちょうど散歩の時間帯に夕日が沈むことになる。普段何の気なしに見ている遠くの山が雑木山だったのだと気づいたのが掲句の景を見た時だった。ちょうど沈みかかった夕日の中に山の頂の幾本もの骨格だけの木の影が揺らめいて見えていた。注意して見なければすぐに裏にある夕日の光に飲み込まれてしまうぐらいの影だったが、注意してまともに夕日を見られたのも冬ならでは、とも言える、、、。(2014年冬詠)

うらぶれて冬田の中の道一人

ちょっと句とは関係ない温水洗浄便座の話です。とある所で便意を催してトイレに入ったらコントロール部分が分かれた温水洗浄便座だった。コントロール部分はリモコンになっていて壁に取り付けてある。我が家と同じだと思いながら使って、止めようとしたらスイッチが利かない。電池切れ?!慌ててリモコンを壁から外して本体に近づけて操作したが、これでも止らない。お湯は勢いよくお尻に出っぱなし。下手に動くと服まで濡れかねない。と、ここで、お尻を洗われながら冷静に考えました。我が家と同じなら、手の届くあたりにコンセントがあるはず。後を見ると在りました!すぐに手を伸ばしてコンセントからケーブルを抜くと、止りましたよ、やっと。やれやれでした。皆さん覚えておいてくださいね。こういう場合は慌てずにケーブルを抜くのですよ、、、。(2014年冬詠)

山茶花や庭師離れて樹形見る

散歩の途中で見る山茶花がきれいだ。先日、とあるお宅の玄関前にバケツに投げ込むようにして大きな満開の山茶花の枝が活けてあった。周囲のタイルの上に落ちた山茶花が散らばって、これも見事だった。このお宅、時々面白い形で目を楽しませてくれる。中学生ぐらいの子供がいる若い夫婦、、、。掲句は昨年、句会への途中で通りかかった別の庭先での景。会心の作の山茶花なのだろう、道路を渡って離れて樹形を見て頷く庭師の満足そうな顔、、、。(2014年冬詠)

冬耕のゆつくりと打つ鍬の音

近所の老夫婦、天気が良ければ一日中畑に出ておられる。元は精米所やら製麺所やらをされていた方で、畑と言っても多くがある訳ではなく、一年中同じ畑を脳梗塞のリハビリを兼ねてこつこつと耕されている。何を植えられているのか、間近で見ないから分からないが、夏の間は草の勢いのほうが強く、端まで耕した頃には反対側は緑に戻っているような状態で、また始めから耕されるように見えた。さすがにこの時期になるとそういう事もなく、日差の中でゆっくりと鍬を使う音が聞こえてくるのだった、、、。(2014年冬詠)