田蛙に皆既月食ゆくりなし

昨年の5月26日は皆既月食だったようです。田蛙は春の季語ですが、この辺りで田水が入り田植が始まるのは五月の下旬、すなわち田蛙の合唱が聞こえるようになるのは今頃からなのです。蛙たちに皆既月食はどう映ったか、、、。(2021年夏詠)

その上に城址あるてふ山の春

散歩の終点の川向うにある山上に城があったと知ったのはいつだったか。そう思って見上げると確かに川側の斜面は急峻で、守りには適しているようだ。山上からは一帯が隈なく見渡せそうだ。春になると急峻な斜面のあちこちに山桜が咲く、それが終わると山つつじ、藤、朴の花と続く。残念ながら城跡への道は整備されていないらしい、、、。(2021年春詠)

近道の路地に朝餉の目刺の香

昔徒歩通勤をしていた頃に近道のために通り抜けていた路地、その路地に面した家の台所の出窓のすぐ外側だった。料理をする音、洗い物をする音、話し声、そして食欲を誘うちょっと濃い味付けの美味しそうな匂いがしてきたものだった、、、。(2021年春詠)