行く春の指先欠けし阿弥陀仏

とある寺の、薄暗いお堂の中の阿弥陀仏、よく見ると上げた右手の木製の人差し指の先が小さく欠けている。お寺も、お堂も、仏様も古い。空家の目立つ村の寺では、なかなか修復ともいかないのだろう。お顔のやさしさが心にしみる、、、。(2016年春詠)

グランドの野球少年雀の子

ただっ広いグランドの向うの隅で少年野球の練習が続いている。絶え間なく続く少年たちの声、それに時たまコーチの大きな声が混じる。こちらは外野の、フェンスの外。フェンス際では雀が、こちらも賑やか、、、。(2016年春詠)

千年の齢の藤や根の若し

散歩に行く河川敷の水際に自生している山藤が花をつけ始めました。むせるような濃い匂いが漂っています。水際で登るところがないので地を這っているのが少しかわいそうですが、強いものですね、、、。掲句の藤は倉敷阿智神社の藤、本当は千年も経っていないそうです、、、。(2016年春詠)

花種の袋を持てば風の音

昔毎年メーデーの頃に組合から花の種が配られていた事がありました。たいそうな花ではありませんが、袋には鮮やかなカラーで咲いた花の絵が描かれ、持てばサラサラと乾いた音が聞こえます。見た目とその音で選んだ種が、実際に咲いたのかは記憶に無いのです、、、。(1999年春詠)