秋深しベンチに語る老夫婦

西川緑道公園での景。朝の日差があふれるベンチ、二人の間にはサンドイッチと湯気をたてている飲物、静かに語り合いながら、まるで自宅の庭に居るかのような雰囲気の食事風景。公園が身近に、日常に溶け込んでいるように思えて、羨ましい景ではあった、、、。(2015年秋詠)

水澄んで姿丸見え川の鯉

川の鯉は飼われている鯉と違ってゆったり泳いでいても周囲に気を配っているようだ。だから気づかれるまでが勝負、身の締まった川の大鯉がゆったりと泳ぐ姿は見事。気づかれると途端に身を翻して遠くへ消えて行く、素早い、、、。(2015年秋詠)

梅もどき褒めて暇のきつかけに

ちょっと用事で近所の一人暮らしの女性を訪ねた時の句。話し出したら止まらない。昔話から近所への苦情へと話は移っていく。さて困った、どうしようと目をやった庭先に綺麗な梅擬。「あ、これだ」とその梅擬をほめておいて、話が途切れたところで帰り支度を、、、。(2015年秋詠)

ばつたんこ鳴る間の黙のくり返し

友人の家に行くと時々何やら外で変な音がする。聞くと自作の鹿威し、調整がうまく行かないらしい。水量が少ないのか、やけに間が長い。それに音もなんだか重そう。二人で見に行くと、ビニールホースから竹筒に注ぐ水が半分こぼれている。竹筒が石を叩く部分には何やらゴムのような物が敷いてある。音が重そうなのはこれが原因らしい。とりあえずこの敷物を外し、ビニールホースを調整して様子を見る。しばらく沈黙、また調整、、、。(2015年秋詠)

烏瓜やつと夕日の色となる

烏瓜が色づき始めました。色づくまでは全く存在感のない烏瓜ですが、色づき始めると途端に存在感を増してきます。他の植物がしだいに衰えて行く中で、夕日の色と良い勝負をしています。秋の深まりを感じます、、、。(2015年秋詠)

捨て犬の人恋ふ目つき秋の雨

奥津湖の湖畔に古民家風の店があります。その近くの広場に数年前から見かける白い犬がいます。捨て犬なのか、迷子になって置いて行かれたのか、車を止めると確かめるようにこちらを見ます。近寄ってくるのでも、逃げて行くのでもありません。ただじっと見ているのです。晴れている日はよいのですが、雨の日にその目を見ると、ちょっと辛いのです、、、。(2015年秋詠)