冬深む壁に熊手と箒かけ

小さな納屋のような建物の軒下に整然と割木が積まれ、壁に箒と熊手が掛けられていた。薪ストーブにでも使うのだろうか、このあたりでは珍しい光景だった。積まれた割木と箒と熊手、オブジェとしても最高だった、、、。先日書いた山小屋暮らしの仙人(と呼ぶことにした)は、最初は薪で暖をとるつもりだったが、小屋が小さくて危ないのでやむなく灯油ストーブにしているそうだ。灯油代も馬鹿にならず、国民年金だけでの暮らしには痛いと、、、。(2013年冬詠)

日に何度来るや鶲の声ひそと

困った困った、今度はジョウビタキが戻ってきた。一昨年一冬を玄関前の梁の上で過し、たくさん糞をして去って行ったジョウビタキのようだ。昨年は現れても居つくことは無く一冬安泰だったが、今年はそうはいかないようだ。今度はよりによって車のサイドミラーがお気に入り、人懐っこいのは良いのだが、車が糞だらけになってしまうのは困る。さてどうしよう、、、。(2012年冬詠)

木枯や旗竿打てる旗の紐

会社員時代、風の強い日には隣の工場の旗竿の音がよく響いていた。金属製のポールはカンカンと乾いた大きな音がする。そこにはポールが三本あり、社旗、国旗、安全旗が毎日揚がっていた。雨の日はどうだった?と、ふと考えたが記憶にない、、、。掲句は通りがかりに聴いた別の旗竿の音、旗は揚がっていなかったがよく響いていた、、、。(2013年冬詠)

冬の日を閉ぢ込めて繰る雨戸かな

早いものですね、もう十二月、日暮も早いです。部屋に出来るだけ日差を入れて、空気が冷たくならない内に、すばやく雨戸を閉める。なんてことを日々繰り返しています。冬至にはもうしばらくありますね、、、。(2013年冬詠)

少年の砂場に一人冬夕日

いつもの散歩コースの河川敷の公園には所々に砂場がある。公園と言っても利用する人はほとんど無く、砂場もゴルファーのバンカーになっているようなものだ。そんな砂場にめずらしく、中学生ぐらいの少年が一人居た。一心不乱に何か練習しているような仕草をしていたが、何なのかわからなかった。もう夕日は山にかかり、あたりは暗くなりかけていた、、、。(2013年冬詠)

冬麗やトラックに待つ引越し荷

岡山の喫茶店での句会へアーケード街を歩いていた途中、ふと見た路地に引越らしい荷物を満載したトラックが、冬の日差を浴びながら止まっていた。これから出発するトラックか到着したトラックかわからないが、日差の溢れる路地もトラックも、閉まった店の多いアーケード街の暗さとは対照的だった、、、。(2013年冬詠)

北風や塗料のにほふ工場街

土地にはそれぞれ匂いがあって、例えば工場街であれば、それは油の匂いであったり塗料の匂いであったりする。掲句は岡山のJRの機関区の近くの工場街、一角に小さな公園がある。時たま子供連れの若いお母さんに出会うぐらいで、いつも閑散としている、、、。(2013年冬詠)