大木の下に日の斑の黄落期

落葉が始まった木の下、上を見れば色づいた葉の間に太陽がまぶしい。下を見ればその光が残る葉の影を斑模様に見せている。日毎にその葉の影が減り、光の面積が増えて行く。やがて葉の影が無くなり、枝だけが影となる頃には、光も勢いを落としている、、、。(2015年秋詠)

弥陀堂の奥まで差して秋夕日

秘仏公開に誘われて立ち寄ったお寺、本堂の手前の一段高いところに阿弥陀堂があった。お寺自体が山の上にあり、さらに阿弥陀堂は西向きで、秘仏の見学後に立ち寄った頃には沈みかけた夕日から堂の奥まで光が差していた。振り向けば夕日、前には光に浮かぶ阿弥陀様、なんとも美しい光景だった、、、。(2015年秋詠)

秋灯下千手観音ゆび細く

道端に出ていた「開山千三百年秘仏公開」の文字に誘われて立ち寄ったお寺。すでに日の傾きかけた時刻、他に参拝者は無く、その日担当の檀家の方だろう、興味本位で立ち寄った私に丁寧に説明してくださった。秘仏公開とは言え、古い建物の薄暗い本堂の中、あまり細かいところまでは見えなかったのですが、、、。(2015年秋詠)

秋時雨さつさと仕舞ふ老釣師

何度か登場していただいた老釣師、久しぶりにその姿を川向うに見つけた。声をかけるには川幅があり過ぎるので会釈だけして通り過ぎた。少し行ったところで、そんな空ではなかったのに、いきなりパラパラと降ってきた。もう時雨の季節。そう続くとは思わなかったが急いで散歩を切り上げた。雨はものの五分も続かなかったが、通りがかりに川向うを見るともう老釣師の姿はなかった、、、。(2015年秋)

意味の無き声の零れてそぞろ寒

なんだかんだ言っているうちに秋も終盤に入って来ました。朝の散歩は寒いぐらいで、ついポケットに手が入ってしまいます。掲句、昨年のそんな頃の句、いったい何の声だったのだろうかと、、、。(2015年秋詠)

秋深しベンチに語る老夫婦

西川緑道公園での景。朝の日差があふれるベンチ、二人の間にはサンドイッチと湯気をたてている飲物、静かに語り合いながら、まるで自宅の庭に居るかのような雰囲気の食事風景。公園が身近に、日常に溶け込んでいるように思えて、羨ましい景ではあった、、、。(2015年秋詠)

水澄んで姿丸見え川の鯉

川の鯉は飼われている鯉と違ってゆったり泳いでいても周囲に気を配っているようだ。だから気づかれるまでが勝負、身の締まった川の大鯉がゆったりと泳ぐ姿は見事。気づかれると途端に身を翻して遠くへ消えて行く、素早い、、、。(2015年秋詠)

梅もどき褒めて暇のきつかけに

ちょっと用事で近所の一人暮らしの女性を訪ねた時の句。話し出したら止まらない。昔話から近所への苦情へと話は移っていく。さて困った、どうしようと目をやった庭先に綺麗な梅擬。「あ、これだ」とその梅擬をほめておいて、話が途切れたところで帰り支度を、、、。(2015年秋詠)