蟻の巣に犬のおしつこ海となる

我が家に残っていた最後の犬がとうとう死んでしまいました。またしばらくは失意の時です。掲句は昨年、年寄だけど身体は小さかったその犬のおしっこに、三年前に亡くなった大型犬の愛犬もみじの大量のおしっこを思い出して詠んだ句です。説明が回りくどいですね、、、。(2021年夏詠)

石楠花や作務衣の僧が水やりに

四季折々の花が楽しめるとTVで時々紹介される普門寺に行ってみた。昨年はコロナ禍で観光客の姿は全く無く、ケーブルTVらしい方が一人で大きなカメラを回しているだけだった。ちょうど戸が開いて出てきた若い僧は挨拶もそこそこにホースを握り水やりに、、、。(2021年夏詠)

とうふ工場南国めきて棕櫚の花

川向うにある青い屋根のとうふ屋さんの工場、川のこちら側から見えるのは工場の裏側だが、その敷地の境目あたりに高い数本の棕櫚の木が並んでいる。青い屋根とマッチしてちょっとした南国の雰囲気を見せている。とうふ屋さんだから朝が早いのか、私が通る頃はいつも静か。今その棕櫚の木に花が咲いている、、、。(2021年夏詠)

欠伸して舌朱かりし烏の子

半分枯れかけた栗の木の上に見つけた烏の巣。見つけた時にはもうそこそこ大きくなった子烏が時々顔を見せていた。人間が来たら隠れるように教えられているのか、気づくと頭を隠してしまう。尻尾は出ている。こっちだって気づかないふりをして観察する。何日も観察するうちに油断したのかその子烏が欠伸をしたことがあった。その時にちらりと見えた舌は、朱色に近い赤だった、、、。(2021年夏詠)

掃除して読めぬ石文若楓

町内の溝掃除、ついでに町内唯一の史跡の掃除もします。史跡と言ってもほとんど訪れる人は無く、小さな丘に壊れかけた鉄柵と大きな石碑、そばに古い楓の木が一本あるだけです。碑文は全く読めません。そこそこきれいにすると後はその楓の下に座り、お駄賃のペットボトルを手にあれこれの話をして時間を過ごします。町内コミュニケーションの貴重な時間、楓の若葉がきれいです、、、。(2021年夏詠)

鍬うてば音の大きく若葉寒

立夏です。先日新聞のコラムに、予報では今年の夏は二年ぶりの全国的な猛暑だが毎年ひどく暑い気がしていたので二年ぶりがピンと来ない、と書いてあった。確かにそう思う。今年は春から暑かった。掲句は昨年、素人の農作業にはこれぐらいが良いですね、、、。(2021年夏詠)